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男鹿半島・大潟ジオパークの魅力を探求

男鹿市地域おこし協力隊の吉岡です。
男鹿暮らしを始めて2年が経とうとしています。

私が男鹿市の地域おこし協力隊になり、SNS上で男鹿に関する情報発信や魅力発信をする上で、1年目にまず意識して行ったことが「男鹿を知る」ということでした。特に観光名所が多い男鹿半島!

移住してきた私は、どこに何があるかもちろん全く知りませんでした。
そんな私が男鹿に詳しくなるきっかけとなったのが、『男鹿半島・大潟ジオパークガイド養成講座』の研修でした。

◆ジオパークとは?

地質・地形から地球の過去を知り、未来を考えて、活動する場所です。
ジオパークとは、地球科学的意義のあるサイトや景観が保護、教育、持続可能な開発のすべてを含んだ総合的な考え方によって管理された、1つにまとまったエリアです。

引用:日本ジオパークネットワーク


研修で出会ったのが、ガイドの中でも活発的に活動し、男鹿半島の魅力をたくさん発信している先輩!ジオパークガイドアスリートこと、澤木博之さわき ひろゆき会長です。
今回は、澤木会長にジオパークのことをインタビューしました。

ガイド養成講座のため、事前に草刈りをする会長と副会長
短時間に綺麗に草刈りが行われていました


ー会長ご無沙汰しております。今日は宜しくお願いします。
いつかインタビューしたいと思っていて、いろいろ聞きたかったことを温めておりました(笑)

ー早速!出身はどちらですか?

男鹿市です。

ー1度も県外にでることなく男鹿で過ごしていたんですか?

仕事で県外には出ていたことはありますが、男鹿生まれ男鹿育ちです。

鵜ノ崎海岸うのさきかいがん小豆岩あずきいわ

ー研修を受けていた際に、耳にしたことで気になっていたことがあるのですが、鵜ノ崎海岸の小豆岩は澤木会長が発見されたのですか?

小豆岩を初めて発見したというより、小豆岩に化石が入っているのを発見したのが私です。

2015年の冬、良い写真が撮れないかなと鵜ノ崎海岸をカメラを持ち、歩いていたら、たまたま小豆岩の表面のところに木の板みたいなものが刺さっていました。

最初は「木の枝の化石かな?」と思い、秋田地学教育学会兼男鹿半島・大潟ジオパーク推進協議会アドバイザー兼男鹿半島・大潟ジオパークガイドの会顧問の渡部わたなべ先生に、「木の枝の化石みたいなものがあるので見てもらえませんか?」と連絡しました。
先生に見に来てもらい、「これはどうも木の枝の化石ではなく、骨の化石みたいだ」と言われ、それでもう1度、調べ直すとぷつぷつした骨の組織が見え、これは骨だということが分かりました。

ここ男鹿半島の鵜ノ崎海岸辺りは、遠い昔は現在より日本海が深く、その当時はクジラもいたため、もしかするとクジラの化石かも?と、2人して大変だ大変だとなり、先生とさらに調べる事にしました。

小豆岩は壊れているものもあれば、そのまま綺麗に残っているものもあり、形も丸いものやまゆ型の楕円形の形もあります。まずは行ける範囲の距離すべての小豆岩をGPSで場所を特定しました。

数えただけでも100個近くあり、沖合にあって長靴で行けない場所は数えることができず、とりあえず行けるとこだけやりましょうということで、見た目でこれは化石が入っていない、これは化石入っていると化石調査を行いました。

ーパッと見で化石が入っている入っていないとわかるものですか?

だいたいわかります。岩から出ているものをチェックしていたので。

2018年まで試行錯誤をしながら、2人で調査を行っていました。鵜ノ崎海岸は冬場でなければ潮もひかないので、吹雪の時も足場が悪い時も転びながらも、調べましたね。

でも私達はクジラの専門家でもないですし、渡部先生は地層や貝化石の専門なので、ここからは専門家の人達に頼まなければこれ以上は進まないということで、別の先生を呼び、3人で調査を始め研究を行いました。

◆小豆岩の形成

小豆岩のように地層の中に入っている堅い塊のことを、コンクリーションと言いますが、その小豆岩の形成がどうして丸くなるんだろうって疑問に思ったことがありました。

もちろん専門家でなければ分からないことなので、そういうことを研究している専門家の方に渡部先生が状況を説明し、機会があれば調べに来てほしいことを伝えてもらいました。ありがたいことに、2020年3月に名古屋大学の吉田栄一先生に来ていただき、調査が行われました。
そうしたら、ここの鵜ノ崎海岸の小豆岩は全部、生物起源と考えられ、海に生息していた生物の死骸が中心となって固まりができたものということが分かりました。

詳しく説明すると、鵜ノ崎海岸の場合は、クジラが死んで海底に沈み、そうすると海の底で暮らしている生物のえさになり、ある程度食べられた後に、少しずつ上に砂や泥がたまっていきます。

死骸からは腐食酸という酸が出るんですけど、その酸が少しづつ均等に染み出していきます。死骸がまだ固まっていない地層の中には、海水もたくさん含まれていて、その海水の中にカルシウムやマグネシウムなどが入っています。

酸とカルシウムとマグネシウムの成分が結合して反応が起き、炭酸カルシウムという固い岩ができてきます。死骸が大きければ大きいほどずっとその反応が続き、あのように丸く大きくなっていくことがわかりました。

ー岩1つにおいても陸上の岩とはまた違った、壮大な物語を感じますね。

男鹿半島は年に1ミリずつ隆起していると言われていて、隆起しながら侵食されています。ところが小豆岩はちょっとやそっとでは割れず、ハンマーなどでは跳ね返ってしまうぐらい固い岩なので、周囲の地層が侵食されなくなってもあのように団子状のものがごろごろ残って見えるわけなんです。

先生達はただ岩を研究しているのではなく、その岩のできかたの応用を研究しています。
骨が溶けずにそのまま岩の中に残っているということは、海水の侵入を防いでいることになり、その形成メカニズムを地下工事の水漏れ防止等のシーリング技術に活かせないかと研究をされているんです。

鵜ノ崎海岸の小豆岩はただ転がっているのではなく、社会貢献できる素材となっている。
ロマンがありますよね。

鵜ノ崎海岸ジオサイト|男鹿半島・大潟ジオパーク

◆おすすめジオサイト

ーすべてを知り尽くした会長が選ぶ1番お気に入りのジオサイトはどこですか?

やはり私は寒風山ですね。

回転展望台は一回転13分かかるのですが、全国で回転する山上での展望台は3箇所しかなく、東北では寒風山だけなので貴重だなと感じています。今では寒風山のシンボルですね。

寒風山は男鹿半島観光の玄関口です。高さ355mしかない低山です。低い山はほとんどが樹林帯で森になっているところが多いですが、寒風山は半芝生の山で見た目も綺麗です。

このように綺麗な姿で残っているというのは理由があり、昔、寒風山は山麓の各集落で草刈りをしていました。当時は斜面も全部区分けして草刈りが行われ、それを監視するための番小屋というものもあったそうです。

地震か強風で現在は倒れてしまっている石碑

毎年草刈りが行われていたので、あのように綺麗な山肌が維持されてきたそうです。これは生活上の草刈りで観光など頭にはなかったかもしれませんが、結果的に草刈りしたり山焼きしたりした歴史が今になってみると観光に繋がっているのだと思います。
寒風山の山肌が綺麗だということで、今年の6月に、「未来に残したい草原の里100選」に、東北で唯一寒風山が選ばれました。大いに自慢していいと思います。

ー7月にはノハナショウブが咲き、秋にはすすきがとても綺麗ですよね。

ノハナショウブ
ヤマユリ

そうですね。8月にはヤマユリが斜面いっぱいに咲きますし、秋になるとセンブリが花をつけてきます。この一帯は草原性植物の絶滅危惧種も多いです。

人間が昔から手を入れていますが、これをやめてしまうとたちまち樹林帯になってしまいます。そうすると景観維持がされなくなります。これから将来にわたり、手を入れ景観を維持しながら保全活動もして、守っていかないといけないですね。

また、男鹿半島の水環境ですが、男鹿半島は約6,000年前には日本海に浮かぶ「男鹿島」でした。秋田市を流れる雄物川と能代市を流れる米代川の砂が海流により運ばれて(砂州)、「男鹿島」とつながって男鹿半島と中に八郎潟が形成されました。従って、内陸のように男鹿半島には大きな河川がないです。
火山の恵みとして寒風山に降った雨水や雪解け水がゆっくり溶岩に浸み込み、長い年月をかけて溶岩流の末端から湧き出している「滝の頭湧水」が、男鹿市民の水瓶・生命線です。湧水量は1日25,000トンと言われています。男鹿半島に住む我々市民の大切な水資源となっているので、寒風山は水を貯える貯水槽の役割をもっていると言っても過言ではないです。寒風山と「滝の頭湧水」は切っても切れない関係にあり一体なんです。
後世にわたって、美味しい湧水を水道水として利用するためには、寒風山の自然環境を壊さないように、我々市民も観光で訪れるお客様にも保全活動の意味合いからトイレの利用、ゴミを捨てないように注意してもらうなどの啓蒙活動も大切になります。

寒風山ジオサイト|男鹿半島・大潟ジオパーク

◆男鹿半島の魅力

ー会長が今思う男鹿半島の魅力を教えてください。

地質や火山など素晴らしいものがそろっています。
日本中のいろんな大学や学生さんたちが男鹿半島に巡検に来ています。

数年前ですが、男鹿に来たことがある人を対象にリサーチしてもらったことがあり、「どうして男鹿にきたんですか?」という問いかけへの回答で1位が男鹿の自然、2位はナマハゲでした。
ガイドをしていると、外から来る人の方が地元の人は気付いていない男鹿半島の良さによく気付いて教えてくれると感じます。

男鹿は豊かな自然があり、ナマハゲなど昔から続く伝統行事があります。
男鹿のナマハゲがユネスコ無形文化遺産「来訪神:仮面・仮装の神々」に登録されているのでインバウンドにつなげたいですね。
日本遺産に登録されている北前船も寄港地として男鹿も関わりがあるので、歴史や文化をうまく組み合わせて観光振興や地域活性に繋げていきたいです。
お客様に来てもらい、見どころを知ってもらうことで、また来たいなって思ってもらいたいですね。

あとは併せて子供たちにも男鹿の素晴らしい自然を見てもらいたいです。
子供の頃の思い出は記憶として残るので、子供のうちに男鹿の良い所を見せてあげて、県外に出たとしても、また遊びに来たり地元にUターンで戻ってきたりふるさとに帰ってきてもらいたいなと思っています。そんな大きな力にはなれないですけど、1つの活動として男鹿に貢献できればと思っています。

男鹿市移住・定住ポータルサイト「おが住」でも澤木会長のガイドになった時の経緯などのエピソードもご紹介していますのでぜひご覧ください!

男鹿市移住・定住ポータルサイト「おが住」はこちらから!

◆海上から見る男鹿半島 ~番外編~

男鹿半島観光遊覧船「西海岸周遊クルーズ」
インタビューを通して、地質や草花といった男鹿半島の内側を紹介しましたが、男鹿半島を外側から見るとまた新たな表情をみることができます。
そして、海上からしか見れないジオサイトもあるので乗船して、是非楽しんでいただきたいです。

孔雀こうじゃくいわや入口いりぐち
大桟橋だいさんきょう

男鹿半島観光遊覧船「西海岸周遊クルーズ」
<2022年観光遊覧船運航期間>
令和4年5月1日(日)から9月30日(金)
運航状況はホームページまたはSNSでご確認ください。
HP:https://oganavi.com/boat/
SNS:https://twitter.com/seabird_oga
運航/男鹿遊覧透視船㈱
TEL.0185-38-2050,090-7067-7237
(問い合わせ時間:8時30分~16時30分)

男鹿半島・大潟ジオパークホームページはこちら

写真提供:澤木 博之
著:男鹿市地域おこし協力隊 吉岡 利那(Twitter:@Oga_Akita_Life


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