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140字小説 No.886‐890

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【No.886 メビウスの輪】
「親指は良いときに立てるし、人差し指は伝えるときに示すでしょ。中指は嫌なときに向けて、小指は約束のときに結ぶよね。でも、この指は特に使わないじゃない」彼女の薬指に婚約指輪をはめる。「だけど、あなたが意味を与えてくれるのね」生きる理由もなかった僕達に、光が射し込むために。

【No.887 悠久童話】
司書さんの絵本読み聞かせが大好きだった。寄り添うような話し方は僕を安心させてくれるけど、絵本を読むときにしか声を出せないらしい。数十年経って図書館に訪れると、おばあさんになった司書さんの姿があった。絵本を読む声はしゃがれている。けれど、あの日と同じように澄み渡っていた。

【No.888 希望峰】
大勢で歩いて道の邪魔になるとき、遠くに佇む君の横には淑やかさが立っていて。電車で譲った席を断られたとき、行く末がなくなった君の前には優しさが座っていて。困難な夢を乗り越えているとき、挑み続ける君の後ろには罵声を浴びせる人も多いけど。そんなのどうせ部外者だ。構わずに進め。

【No.889 損属】
大切か。と聞かれたら蔑ろにした方だし、愛おしいか。と言われたら首を横に振る。それでも交通事故で亡くなった母を蘇らせるのは、もう一度会いたい気持ちがあるからだ。勝手に死ぬな。気まずそうに笑う母と、不格好に抱き合う。僕の握るナイフが母の腹部に刺さる。やっと自分の手で殺せた。

【No.890 ダイアローグ】
心が醜くなる度、言葉は綺麗になった。「さよなら」と言えなかった一秒前に戻れたとして、それでも、一秒後に「さよなら」を言えない気がする。飾らない心と、取り繕った言葉ならどちらが美しいのだろう。将来も、夢も、全て不明瞭だから。今、幸せかどうかなんて。今、決めなくてもいいよ。

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652