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140字小説 No.-121‐125

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【No.-121 猫蜜】
料理店の売上が落ち込む。気分転換に飼い猫を吸っていると脚から甘い匂いがする。肉球を撫でれば蜂蜜がとろっと溢れ出てきた。レトルトカレーにかけると優しい口当たりに舌鼓を打つ。ヨーグルト、椎茸の含み煮、ジンジャーポークソテー。猫蜜をたっぷり使った新メニューでお店は大繁盛した。

【No.-122 エンパシー】
なんでもない日常や風景描写に潜むなにかが好きだ。今はもう見上げなくなった空が青いこと。大人になってからのさよならが美しいこと。あなたの瞳が永遠に閉じないこと。それらがいつか、当たり前を失ってしまうからなのかもしれない。もう二度と会えなくなる前に、もう一度、星々に願った。

【No.-123 冬菜のお味噌汁】
雪の中という厳しい環境で育つ雪菜は、生命力の強さを感じさせてくれる。冷たい現実から逃れるために、私はファンタジーな世界観が好きになった。心も、言葉も、声も、凍ったままでよかったのに。絶対零度の私の世界を溶かしたのは、毎日お味噌汁を飲んでくれるあなたの穏やかな表情だった。

【No.-124 命を描く】
額縁描きに絵を頼む。そのものではなく、絵を飾る額縁の方を描いてもらうのだ。登場人物の物語を彩るように、水彩で象られた額縁が淡い明かりを生み出す。彼女の手にかかればどんな後悔も、未練も、額縁に飾って思い出に仕立てる。光を直視できない人にとっての、安らかな救いとなるように。

【No.-125 フラクタル】
坂の上の研究所で色の実験をしている変わり者の学者がいた。この世界には白と黒の二色しかないのに、新たな色を生み出そうとは馬鹿な考え方である。何度も、何度も、何度も、失敗を繰り返して、今までの積み重ねが無色透明になっても探求は続く。いつか、世界中がいろんな色で溢れるように。

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652