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140字小説 No.791‐795

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【No.791 揚げ文字屋】
仕事で疲れたときは揚げ文字屋に限る。今日のおすすめは『お前もがんばってるよ』だ。どんなにありふれた台詞でも、創業当時から継ぎ足してきた言葉に絡めれば途端に味が増す。このお店は二度漬けを禁止していない。何度も、何度も、溜まった旨みを纏わせて、僕は元気の出る文字を頬張った。

【No.792 星の降る夜】
ベランダにお揃いのマグカップを用意して、ふたご座流星群を双子の妹と眺める。互いの手が冷えないように、手を繋ぎながら夜空を仰いだ。「流れ星が見えなくても、お願いしたら叶うかもね」けたけたと笑いながら、妹の瞳から涙が流れる。気付かれないように、そっと、僕達の行く末を祈った。

【No.793 怠惰の言い訳】
やらなくてはいけないことがあるのに、どうでもいいことに目が向いてしまうのは、出番を待っている物事達が優先順位を争っているからだ。漫画の並び替え、ネットサーフィン、SNSの確認。それぞれが声なき声を発している。無視をするのもかわいそうだから、本当は嫌だけど構ってやるのだ。

【No.794 襲名症】
友達と勘違いして他人に声をかけてしまう。だけど、その人は俺の名前を呼んで、友達しか知らない話を伝えてくる。気味が悪くなり急いでその場を立ち去った。別の日、青年から「おっ、××じゃん」と話しかけられる。人違いであることを伝……あれ、記憶が――そうだ。僕とこの人は友達だった。

【No.795 命のお下がり】
姉よりも出来の悪い私に、両親は何一つ買ってくれない。洋服、おもちゃ、ランドセル。いつもお下がりで済まされた。姉が亡くなってから私は代用品の役割を求められる。心臓の病気を患っても両親は優しくしてくれなかった。ドナーの姉を殺したって結局、私は命のお下がりをもらうだけである。

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652