見出し画像

140字小説 No.≠091‐095

タイトルからツイッターで載せた作品に飛ぶことができます。
お気に入りの作品にいいね、RT、感想などしてもらえると幸いです。

【No.≠091 献花】
祝福の種が売られていた。花を咲かせば夢は叶うけれど、枯らしたら夢は呪いになるそうだ。種の恩恵なのか、私は好きな人と付き合えることになった。けれど、枯らしたら別れてしまう。いや、それ以上の不幸が待っているかと思うと花にだけ神経を注ぐ。いつしか、彼に対する興味は失っていた。

【No.≠092 薊揺れる】
公園を歩いていると、窪んだ水皿の中に笹舟が置かれていた。そういえば、別れた彼女は船を編むのが得意だった。蛇口から水を出して笹舟を浮かす。あの日の記憶も、彼女との思い出も、どこにも流せないままぷかぷかと揺らぐ。夕陽が滲む。いつまでも辿り着けない、小さな『こうかい』だった。

【No.≠093 花負荷】
彼女はいつも花に水を上げていた。「祝福の種を植えてみたの。この花を枯らすと不幸になるんだって」取り憑かれたように世話をする姿は病的に感じた。彼女の背中越しから覗く花を見てぞっとする。おぞましい形に変化していることにも気付かないで、彼女は、ただ、花だった何かを愛でていた。

【No.≠094 惑星ひとりぼっち】
都会には多くの人達が住んでいるはずなのに、電車の中ではみんな携帯とにらめっこして。スクランブル交差点ではみんな忙しなく歩いて。透明になった錯覚に陥る。この惑星でひとりぼっちになった気分だ。本当に私は街にいるのだろうか。存在をなぞるように呟く。「私の声は届いていますか?」

【No.≠095 迷い言】
『迷子の言葉を探しています』電柱に張り紙が貼られていた。その言葉の特徴は優しくて、尖っていて。冷たくて、温かくて。綺麗で、醜くて。幸せで、悲しくて。ずっと側にいたはずなのに、気付いたら失っていたそうだ。初めて知ったその言葉を、僕は、心のどこかで覚えているような気がした。

オリジナル版の140字小説はこちらから!

この記事は有料ですが全編公開になっています。私の活動を応援してくださる方がいましたら投げ銭してくれると嬉しいです。また、サポートやスキのチェック。コメント、フォローをしてくださると喜びます。創作関係のお仕事も募集していますので、どうか、よろしくお願いします。

ここから先は

0字

¥ 100

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652