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140字小説 No.-091‐095

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【No.-091 青春花火(藍煩い⑧)】
人生最期の日だというのに、高校の友人達が私を河川敷に連れ出す。電話越しにカウントダウンする友人の声がゼロを告げると、打ち上げ花火が夜を裂いた。後ろから「逃げろ!」と背中を押す友人達と一緒に、青春のくだらなさの中を走る。午後九時、藍色の夜に、藍色の花火と笑い声が上がった。

【No.-092 夜光観覧車(藍煩い⑨)】
遊園地で最期のひとときを過ごす。制服を着た女子四人組。手を繋いだ老夫婦。初々しいカップル。誰かの幸せが今の私にはとても眩しかった。観覧車が夜の帳を泳ぐ。午後十時、窓の外では藍色の蝶が光のパレードを生み出していた。この世界の不平等は全て、胡蝶の見ている夢なのかもしれない。

【No.-093 コントラスト(藍煩い⑩)】
本とカップを用意して椅子に座る。藍煩いの歴史、発症者の対談、この国に起きた混乱などを綴った話は、今まで僕にとって他人事だと思っていた。付き合っていた人が苦手だったコーヒーに角砂糖を落とす。現実と虚構が混ざり合ってまた一つになる。午後十一時、夜が溶けて、融けて、解け合う。

【No.-094 わたしと孤独とうそと(藍煩い⑪)】
金子みすゞは二十六歳の時に服毒自殺したらしい。藍煩いに罹った人の無断撮影。神の瞳と崇める宗教。伝染のデマを信じた差別。みんなちがってみんないいなんて嘘っぱちである。わたしも明日で二十六歳だ。午前零時、付き合っていた人が苦手だったホットミルクを飲む。救いが喉に流れ込んだ。

【No.-095 回遊と融解(藍煩い⑫)】
何十年も前に老人ホームへ入居した妻を思う。昼寝が好きだったあいつは、目を覚ます度に記憶を失っていく。介護から逃げた俺の事を、今でも覚えてくれているだろうか。いや、忘れてくれた方がお互いのためだ。午前一時、俺が死んだら藍色の蝶になって、お前の側まで飛んで行けたらいいのに。

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652