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140字小説 No.816‐820

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【No.816 概念を被る】
お店で被り物を探す。泥を被せれば私の責任も嫌いな同僚のせいにできたり、灰を被ればシンデレラストーリーを追体験できる。今日はみんなからちやほやされるために被る猫が目的だ。適当に選んで店を出るなり、通行人達が私を見て悲鳴をあげる。被り物を確認すると、猫は猫でも化け猫だった。

【No.817 迎合】
都会から越してきた僕は女の子と仲良くなった。当時は気にならなかったけど、大人になった今、女の子の両親は神様だったという意味もわかってしまう。捨てたゴミの中身を知っていること。おばさんが妹に赤飯を炊いたこと。田舎に住んでいた頃を思い返す度に、生温い気色悪さが肌をなぞった。

【No.818 エントロピー】
「『働く』は『人が動く』と書くだろ。だから人間扱いされなくなったら動かなくていいんだ」ブラック企業に勤める友人が笑う。その夜、最終電車に飛び込んだと友人の母から聞いた。重力を失う。出せなかった彼の辞表を強く握る。それでも友人の分まで、終わってたまるか。終わってたまるか。

【No.819 birthday song】
彼女は年齢に一つ足した本数のろうそくを誕生日ケーキに挿す。「生きた証を命に見立ててるんでしょ。自分で自分の命を吹き消すみたいで嫌じゃない」少なくとも、来年までは生きられるようにと。思い出に縛られないために、亡くなったら今度は減らしていく。彼女の命を、僕の息が吹き消した。

【No.820 不革命前夜】
最近は寿命を待たずして人生免許を返納する者が多い。かくいう僕もハローライフで手続きを受けている。若者の自主返納は珍しくない時代だ。誰にも見向きされないまま、足取りだけは軽やかに弾む。受付のお爺さんがくたびれた表情で扉を示す。「ではあちらの部屋に。最期はどうか、良き夢を」

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652