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140字小説 No.≠006‐010

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【No.≠006 嘘を結ぶ】
二十歳になる娘から父の日にネクタイを貰った。いつまでも小さいと思っていた娘から贈り物なんて。嬉しいけど心が締め付けられる。胸を張ってこのネクタイを結べるように、いつか本当のことを言わないといけない。机の引き出しを開けて履歴書を睨む。「そろそろ新しい仕事を見つけないとな」

【No.≠007 光】
夕陽に沈む街を歩いていると、一年前のことをふいに思い出してしまう。あの日、彼は交通事故にあって亡くなってしまった。太陽の光に視界を奪われた運転手の車が、歩いていた彼の姿を捉えられずに衝突した。光が人を救うことがあるように、光が誰かを殺してしまうことだって充分にあるのだ

【No.≠008 花雫】
『落花生』という響きが友人は好きだった。漢字を紐解いていくと、言葉の美しさに気づく。落ちる。花。生きる。生命の儚さを感じた。その友人は飛び降り自殺の末に醜い姿になってしまった。きっと今日も良い日ではないけれど、友人の分まで生きようと思った。落ちる。花。それでも、生きる

【No.≠009 裏道】
「この先で検問してるんだって」助手席に座る彼女が携帯を見ながら呟く。「僕達のこと、もうニュースになってるのかも」嫌でもトランクのゴミ袋が気になった。「本道の方がよかったかな」ハンドルを持つ手が震える。彼女がやわらかく笑った。「正しい道なんてとっくに外れちゃったじゃない」

【No.≠010 疫猫】
小学生の頃、猫の死体を触ったことがある。母に話すと「そんな汚いものを触ったのなら早く手を洗いなさい」と肩を叩く。でも私には、安らかな表情で眠る猫を綺麗だと思えない母こそ、むしろ汚い存在なのだと感じてしまう。お風呂に入って母に触られた肩を何度も、何度も、何度も洗い流した

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652