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140字小説 No.681‐685

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【No.681 ななしの】
彼女のことを偲ぶ。今にして思えば、女の子っぽい名前が嫌いだと言っていた彼女に対して、僕の名前だけが最後にあげられるプレゼントだったのかもしれない。名前を失った彼女をいつか、忘れてしまう。悲しいことではなかった。また別の何かに生まれ変わるだけだ。生命としての、姓名としての

【No.682 歯虫】
現代病である歯虫の治療で、歯医者は患者で溢れ返っている。歯の黒ずんだ部分に足だけが生えた歯虫は、口の中から頭の神経へと潜り込む。乗っ取られた人間は甘いものが欲しくなり、炭酸飲料やスナック菓子を貪ったまま歯磨きをしなくなる。そうして人間を操り、仲間の歯虫を増やしていくのだ

【No.683 夢ガチャ】
子どものときに回し過ぎてしまった夢ガチャのせいで、今では地に足のついた将来しか残っていなかった。昔は消防士、俳優、小説家と回せば回すほど夢が溢れてきたのに。今では夢ガチャを回すお金も、時間も、興味もない。「これで最後」と諦めて回しては、中身を見ることもなくゴミ箱に捨てた

【No.684 ワードフォンデュ】
適切な人間関係が難しくなった現代で、ワードフォンデュは国民のおやつになった。甘酸っぱい言葉、ほろ苦い言葉で気持ちをコーティングするのだ。オブラートに包むだけでは本音を隠せない。それほどまでに誰かを貶める言葉は力を持ってしまう。優しさの膜で覆って、傷つかない言葉を口に含む

【No.685 月の魔法】
満月を見ると子どものころを思い出す。母親が満月に手をかざして軽く降ると、手のひらには月見団子が乗っかっていた。「取り過ぎると三日月になっちゃうから、今日はこれだけで我慢してね」と微笑む。今にして思えばあれはマジックの類なのだけれど、当時の僕は母親が魔法使いのように思えた

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652