見出し画像

140字小説 No.≠131‐135

タイトルからツイッターで載せた作品に飛ぶことができます。
お気に入りの作品にいいね、RT、感想などしてもらえると幸いです。

【No.≠131 退廃都市①】
別れた彼女と同棲していた街に訪れる。電車から降りると、秋も半ばだというのに夏のような熱気が僕に纏った。昔は自然の多い場所だと思っていたけど、今では高層建築物がそびえ立つ。変わったのは景色なのか、大人になってしまった僕の思い出なのか。いないはずの彼女の声を聞いた気がした。

【No.≠132 退廃都市②】
公園のベンチに座っていると、見慣れぬ機械を動かしている老人がいた。「これで地質調査ができるんです。街の発展のためですよ」老人はくたびれた笑みを浮かべる。空高くそびえ立つ電波塔を眺めた。視線を下げると街の発展と引き換えに、名前も知らない草花達が車輪に轢かれては散っていく。

【No.≠133 退廃都市③】
流れない噴水を眺めていると、彼女が怒っていたことを思い出す。「さみしいね」なんておどけて笑って。落ち葉が噴水の底で静かに佇んでいる。僕も、未来も、思い出もさえも、流れないまま沈んでいく。いつか心が満たされるときを待って。空っぽの噴水の底を、風に揺られてはさまよっていた。

【No.≠134 退廃都市④】
遠い昔、僕達は住んでいた街をあてどなく歩き回った。錆びた猫の銅像。多くの研究機関。空っぽの噴水。ロケットを模した巨大なオブジェがある宇宙施設。僕達の興味はいつまでも尽きなかった。「私達の未来は、もしかしたらここにあるのかもね」彼女がはにかむ。少し俯いたあと、僕も笑った。

【No.≠135 退廃都市⑤】
ロケット発射場に訪れる。人類の願いや希望が、灰色の煙を吐き散らしながら上昇していく。この世界に彼女がいなくても、大気圏の外には存在するのだろうか。『グッドバイ グッドバイ バイバイ――』彼女と聴いた歌を思い出す。色彩を失うように僕達の思い出も、空高く打ち上げてほしかった。

オリジナル版の140字小説はこちらから!

この記事は有料ですが全編公開になっています。私の活動を応援してくださる方がいましたら投げ銭してくれると嬉しいです。また、サポートやスキのチェック。コメント、フォローをしてくださると喜びます。創作関係のお仕事も募集していますので、どうか、よろしくお願いします。

ここから先は

0字

¥ 100

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652