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140字小説 No.≠016‐020

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【No.≠016 煙る】
喫茶店でタバコを吸っている男がいた。家に帰ると先ほどのタバコの臭いが充満する。お気に入りの服に臭いが染み付いていた。ふいに、別れた男も同じタバコを吸っていたことを思い出す。別に嫌な臭いではなかったのに、別れた男のことが改めて不快だと恨む。洗濯機の中で回る思い出を眺めた

【No.≠017 アダプト】
SNSのアンケート機能を使って、私は自殺した方がいいのか聞いてみる。もちろん誰もが「生きてほしい」って悲しむと思っていた。けれど友人から、他人から。醜い結果だけが突き付けられる。画面の向こうの知らない人が、知らない誰かの人生を蔑ろにしていく。携帯を閉じて、私の未来が——

【No.≠018 名前のない関係】
彼が私の名前を呼ぼうとして、少し気まずそうに苗字で呼び直す。「そんな関係じゃないよな」と、間違ったみたいな顔をして笑う仕草が嫌いだった。私の名前をちゃんと呼んでよ。透明じゃない色にして。あなたの声で、私の存在を呼んでほしかったのに。この関係の名前は未だにわからなかった

【No.≠019 時の鐘】
押入れの奥から古い万華鏡が出てくる。昔、彼女と行った観光名所で買ったものだ。そっと覗いて、静かに筒を回す。景色がゆっくりと変わっていく様子が、時の鐘を撮っていた彼女の姿と重なる。時間も、夢も、将来も、気付けば少しずつ移り変わっていく。季節はもうすぐ冬になろうとしていた

【No.≠020 花末路】
幼いころ、花売りの女性に出会った。私に種を授けて「二十歳までに花を咲かせるの。赤い花は幸福の終わり。青い花は不幸の始まり」と告げる。もしも、花が咲かなかったら? 私はなぜか種を捨てることができず、操られるように水を与え続けた。十九歳になった今でも、種は埋まったままだった

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652