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140字小説 No.851-855

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【No.851 サークルゲーム】
同級生の女の子は、図書室で借りた本にこっそりと自作の帯を巻く。歴史、星座図鑑、ホラーと多種多様なジャンルを好むのに、恋愛物だけは想像できないから苦手だと話す。いつか、自作の帯を作ってもらうために。僕は女の子をモチーフにした小説を、今日も授業中にひっそりと書き進めるのだ。

【No.852 華氏451度】
本が自然発火する事故が起きた。復讐心や嫉妬心から生まれた本が、誰かに必要とされたくて燃え上がる。消読士の女性が火傷するのも厭わず、丁寧にページを捲る。読み終えた本を閉じると静かに炎が失われていく。人に害をなす本は禁書になるだろう。それでも、焦げた手が表紙を優しく撫でた。

【No.853 驕る感情】
冴えない同僚からご飯に誘われたのに、私もお金を払うようにと催促してくる。「男のくせに割り勘なんだ」「え、割り勘じゃなくてもいいの?」同僚が喜んでレジへと向かい、私に会釈をして先に店を出ていく。帰り際、店員に呼び止められた。「お代は全て、あなた様の奢りだと伺っております」

【No.854 アダルトチルドレン】
産まれてこなければ、『産まれてこなければ』と考える猶予もなかったのに。母の愛する男の、母を見る好意の目が私に向けられる感情と同じことに気付く。産まれてしまったから、『産まれてしまったから』と笑える余裕もなかった。愛ってやつで救われる意味は、大人になれど理解できずにいる。

【No.855 なめくじさい】
いつも明るい女の子が、最近は虚ろな目で性格もジメジメしている。ロングだった髪型は団子頭に変わって、よく見れば赤と青の紫陽花だった。遊びに来た女の子に塩を振ったスイカを差し出すと、一口食べた瞬間に体が縮んで倒れ込む。やがて、紫陽花から無数のナメクジがぼたぼたと落ちていく。

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652