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140字小説 No.866‐870

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【No.866 イデオロギー】
「綺麗事って結局、他人事なんだよね」会計を済ましたパパが、募金箱に釣り銭を入れる。「自分に飛び火しないから、好き勝手言えるんだよ」大きな手が私の制服の乱れを直す。「お小遣いが貰えるんだから、君も助かるだろ」私は、あの家から連れ出してくれるのなら、それが犯罪でもよかった。

【No.867 マザーグース】
小学生の頃、先生をお母さんと呼んでしまう癖が抜けなかった。その度に先生は複雑な顔になる。家では一度もお母さんなんて呼んだことがないのに。父の再婚で義母になったのが先生だった。「先生はお母さんじゃありません」離婚によって再び他人となった今、先生の悲しそうな声が蘇ってくる。

【No.868 ドーナツホール】
教室で友人とドーナツを食べていたら、好きな男の子が近付いてくる。「俺も食べていい?」嬉しいけど、二時間も並んでやっと買えたドーナツだ。迷っている間に友人が半分こにして差し出す。仲良く笑う二人をドーナツの輪から恨めしく眺めた。甘い香りなのに、口に含めばなぜか苦い気がして。

【No.869 八月、某、月明かり】
何をせずとも好かれる人がいる一方で、何をしても嫌われる人がいるのはなぜだろう。だから、自分が救いようもない人間だと思い込めば楽でいられた。人生は不平等で、不公平だから、無理して無理しなくてもいいよ。いつか、他人の幸せなんてどうでもよくなるほど、最低な夜が君にも降るから。

【No.870 夜霞】
星が瞬くのは大気が汚いからと聞いたことがある。綺麗の裏に潜む背景が夢のないものだとは知りたくなかったけど。オーロラが生まれる意味も、花火のあとの残骸も、美しいだけの世界ではないと理解しているから苦しくなったりもする。でも、私達はそんな醜い世界の上に成り立って生きていた。

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652