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140字小説 No.-116‐120

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【No.-116 誘いの声】
取り壊しが決まった百貨店に訪れる。中は人が多いのに暗い。『××ちゃんのお母様、娘さんがお待ちです。一階までお越し下さいませ』亡くなったはずなのに、店内放送から流れる娘の幼い声に涙が伝う。ふらふらとした足取りでサービスカウンターに着くと、虚ろな目をした人達で溢れ返っていた。

【No.-117 喜劇】
夢から目が覚めたら、部屋の中を見渡すのが趣味だった。空みたいな海みたいな色のカーテン。前後二列の本棚にCD用コンテナ。化粧品の数々は昨日までの私を象るものだ。清らかな水を観葉植物に注ぐ。背伸びをしながら、丁寧な暮らしを実感する。今日も馬鹿にしてくる人達を嗤え。わっはっは。

【No.-118 分散和音】
一緒に楽しんでいたゲーム仲間も少なくなった。私の今までが否定されたようで、正しさを判断する目が濁ってしまう。もう遊んでいる場合じゃないのかもしれない。失った子供心は賽の河原で待ちぼうけしていた。けれど、会わなくなっても、趣味が変わっても、どこかで元気にやってるといいな。

【No.-119 美しい鳥達】
ラジオを聴いていると二人の女性が創作の話をしていた。スランプ撃退法。作品タイトルの名付け方。小説執筆論。ゆるっとしたおはなしは気持ちが軽くなる。「みんな、ではなく。だれか、の心に残る一文を」縋るようにどちらかが呟く。光だって、闇だって、後ろ向きに肯定してくれる気がした。

【No.-120 性善行路】
「失恋の度に小説を書いてるんですか?」文学の即売会で指摘される。言い分は確かで、性的倒錯なのかもしれない。だけど、そういった理屈で書くのは今日で最後だ。自分のブースで売り子をしている彼女と目が合う。カバンの底に忍ばせた婚姻届を気にする。新刊が全て売れたら、そのときは――

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652