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水彩140字小説まとめ②

水、雨、海などに関する140字小説をまとめました!

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【No.474 すいそう(いろは式「す」)】
素晴らしい朝を迎える度に、みすぼらしい私を自覚する。「そんなの水に流せばいいじゃん」が私の口癖だった。夢も、希望も、思い出も、この村も、今日の夜には水の底に沈んでしまう。私だけを残して村の人々は去っていく。依代、人柱、犠牲。呼び方はどうでもよかった。水に流してしまえば、

【No.479 湯たんぽぽ】
水も火もガスもない山奥で、寒さに凍えそうになっていた。いつからここにいるのか、いつまでここにいるのかわからないまま数年が経つ。自生する湯たんぽぽの綿毛を、容器の中に詰めてやさしく振るとほんのり温かくなってくる。湯たんぽぽが至る場所に咲くころ、永久凍土の山にも春が生まれた

【No.483 空槽】
空槽を覗くと、激しい雨や雷で満たされていた。一羽の鳥が嵐の中を果敢に飛び回っている。アクリル板のない枠組みだけの箱に、観賞用なら比較的おだやかな空の環境を整えたり、鋭い飛行を楽しみたいのなら悪天候の設備を用意する。魚を水槽で飼うように、近年では鳥は空槽で飼う時代になった

No.489 入欲剤】
仕事の疲れを取るために入欲剤を使うと、浴槽のお湯が札束と裸の女に変わっていく。人の欲を粉末にした代物だ。元彼を見返したい。同僚を蹴落としたい。入欲剤を使うほど欲は濃くなっていく。ふと足が滑って体が浴槽に飲み込まれる。深くなった底に足が届かなくなり、やがて欲に溺れていった

【No.490 空を泳ぐ】
「活きのいいエビフライが手に入ったんだよ」と大将に勧められる。最近は天候が不安定で、天然モノのエビフライはなかなか空を泳いでいない。昔は『海老』という生物が海にいたらしい。太陽が近くなった今、灼熱となった海から生物は消えて、逃げ場を求めた魚達がフライになって空を目指した

【No.508 未海域】
緑色に濁った海を冒険する。得体の知れない泡が立ち込めて、視界を遮るように煙が発生する。我々より数十倍の大きさである『何か』が海に飛び込むと、怒り狂う荒波が襲ってきた。『バブ』と呼ばれる海域を抜けて、隊員をなんとしても守り抜かなければならない。この、アヒル隊長の名にかけて

【No.545 ひさぎこむ】
陶器製の水差しから言葉を注ぐ。錆びて、濁って、変色してしまった言葉がコップの中で澱を生み出す。彼女が溜めていた言葉を、いつまでも飲み込めないまま数年が経った。「私のことは物語にしなくていいよ」という願いを、いつまでも飲み込めないまま。言葉を売っていた。もうすぐ秋が過ぎる

【No.554 おいしいスープ】
大人気のラーメン店に訪れる。夫婦で営んでいるお店は忙しくて、午前中にはいつもスープを切らしてしまう。なのに旦那さんは「ちょっと風呂入ってくるわ」と厨房を奥さんに任せてしまい。だけど奥さんもにこにこ、お客さんもにこにこ。笑顔が絶えないくらいおいしい秘密のスープを飲み干した

【No.570 夕融】
夕日が溶け出して、橙色の雨が降り注ぐ。街に、花に、人に、夢に、雨が侵食していくと、やがて感傷的な気持ちに取り込まれてしまう。機能を失って、希望を失って、今日を失って。鮮やかだったはずの思い出も色褪せてしまう。夕日が欠けていく。三日月に変わる。ずっと、ずっと、夜が生まれた

【No.571 ぎむ茶】
夏を迎えると会社では、ぎむ茶の補給が徹底された。「残業しても納期までに間に合わせなくっちゃ」「会社の為にがんばらなくっちゃ」といった思いを強制的に植え付ける。上司を立てること。部下は口出ししないこと。義務だから。義務だからと言い聞かせる。飲む、飲む、飲む。吐いても飲んだ

【No.582 晴れのちラムネ】
「今日は晴れのちラムネです」と天気予報士が告げる。わざと傘を持っていかなかった私は、案の定ラムネに濡れてしゅわしゅわになってしまう。同級生の男の子が「何やってんだ」と笑いながら傘を差してくれる。ラムネは降り止んだはずなのに、ずっと、どこからかしゅわしゅわと音が弾けていた

【No.589 金魚すくい】
夏祭りの屋台で金魚すくいを見かける。その店はポイの代わりにシャボン玉を使うそうだ。ふっ、と生み出した泡で金魚を包む。優しく作った泡なら金魚は暴れずに、ボウルの中まで運ばれていく。隣の名人がシャボン玉を吹くとまるで水槽のように、何百匹もの金魚が泡の中で浮かんでは泳いでいた

【No.594 正しさの原液】
カルピスと水の境界線について私達は考えていた。水泳競技で結果を残せないと、両親は私のことを見向きもしない。「薄めちゃえばいいんだよ、濃いだけの思い出なんて」と、そういって友人は高校のプールにカルピスの原液を流し込んでいく。笑い合いながら、私達の正しさが曖昧になっていった

【No.602 言葉の魚】
鮗と鮴の泳ぐ波打ち際で高校生の男の子と女の子が遊んでいた。砂浜を蹴るたび光と一緒に鰙が飛び交う。その様子を眺めながら、甘酸っぱい海の中を鯖と鰆が戯れる。生きている間、ずっと、どこにいても言葉の魚は泳いでいて、きっと、新しい「何か」の訪れに、世界中で魣と鱤が溢れ出していた

【No.611 入れ人間洗浄液】
入れ人間洗浄液に人間を漬け込む。汚くなった外見や心を綺麗にしてやるのだ。最近は醜い感情がこびりついている人間が多くて参ってしまう。一日中たっぷりと漬け込んでそろそろ頃合いだ。洗浄液から人間を取り出して、何かを探すように「ふがふが」と言っている口と目の表面に僕達がはまった

【No.620 飛び出す絵本】
娘が飛び出す絵本をねだる。高価だし後片付けが大変だ。しかたなく『浦島太郎』を買って帰宅する。「お庭で開くのよ」という言葉を無視して、娘がすぐさま絵本を開いてしまった。浦島太郎、亀、乙姫が勢いよく現実世界に飛び出しては、部屋中に海水が満たされていく。他の本にすればよかった

【No.654 秋しとど】
雨の日にしか会えない女の子がいた。ふいに目の前に現れては悲しい顔をする。僕の声は届かないし彼女の声も聞こえなかった。歩道橋の下で彼女の姿を見かける。花束と手紙を添えて涙を流していた。ふと、手紙の文章が目に入ってしまう。『あなたが亡くなったのは、どしゃ降りの雨の日でしたね』

【No.664 濡れる】
駅のホームに辿り着いていることにも気付かず、傘を差したままのサラリーマンが歩いていた。うっかりだなと思いつつ彼の表情を覗くと、俯いて、虚ろんだ目で、うわごとを繰り返す。雨だ。彼の心には、まだ、ずっと、雨が、雨が、雨が降り続いている。空が晴れ始めても、ずっと、雨が、雨が、

【No.723 人生の希釈量】
「カルピスの原液を水で薄めるより、水をカルピスの原液で濃くしていった方が失敗しないよな」と彼が笑う。つまらない理屈を延々と聞かされた挙げ句「濃い話ができた」と満足する彼を見て、人生の希釈量を間違ってしまったことに気付く。私達の関係が、感情が薄まっていくのを感じていった

【No. 731 嘘ついたら】
「本当に虹色のウミガメを見たんだって」「お前はいつも嘘をつくからな」「じゃあ今度連れてきてやるよ」「約束だぞ。ひれきりげんまん嘘ついたら口の中にいーれる。ひれきった!」承認欲求を満たすための嘘だった。人間の口に入れられるのを恐れたハリセンボンは、急いで海中を探し回った

【No.778 プラトー】
私の瞳には海が宿っている。目を閉じれば波を打つ音が聞こえて、暗闇の中で深度が増していく。再び目を開けたときは視界に海が広がった。シーラカンス、オウムガイ、アノマロカリス。太古の生命体に想いを馳せる。数億年後の私にも、どうか瞳の海と同じく、おだやかな日々が訪れますように。

【No.833 フローライト】
許すことが美徳で、認めることが美学なら、この世は醜いもので溢れていた。「海は青色で塗りなさい。それに――」右利きに矯正させようと伸ばした先生の手が、筆洗いバケツに当たって濡れた絵を思い出す。卒業アルバムに綴った将来は、正しく、正されて、描きたかった色を忘れたままでいる。

【No.841 汽水域】
飲み物が入っていた空のペットボトルに、粉末タイプのスポーツドリンクを溶かしたら、果汁風味になっておいしいと彼氏が笑っていた。容器を洗わずに何度も、何度も使い回す。なぜこんな男を好きになったのか。苦い記憶が私の頭にまとわりつくけど、まぁ、水に溶かして薄めればいいのだろう。

【No.891 式日】
蛇口から流れる水を水差しに入れるだけで、それが美しいものだと錯覚できる。いつからだろう。ミネラルウォーターが飲めなくなったのは。彼が寝付けない私の隣に座り、グラスから飲みかけの水を飲む。唇を重ねた。最低な夜に睡眠薬を流し込む水の味なんて、あなたは何も知らなくていいのに。

【No.906 濃淡蝕】
「どうせ死ぬなら濃くて短い人生がいいだろ」アルコール依存症で亡くなった父親が、度数の高い酒を好んでいたの思い出す。彼を否定したくて昔から味の薄いカルピスを作っていた。禁煙で震える手で息子の頭を撫でる。いつか自分も同じ結末を辿るのだろうか。粘りつくような、血の濃さを呪う。

【No.913 斜光】
涙彩絵具で本を読む彼女を描く。嬉しいときに流す涙、悲しいときに流す涙で絵の透明感は変わる。穏やかな別れの午後に、安寧を色濃く塗るほど思い出は淡くなった。後悔も、未練も溶かしたホワイトアイビスの紙が滲む。頬を伝う彼女の涙も知らず。某月某日、某所にて。まがい物の笑顔を描く。

【No.924 感情連理】
人は一生で笑う時間より泣いている時間の方が圧倒的に長いらしい。今がどんなに幸せでも、どうせ悲しいことが多いから毎日を楽しめなくなってしまった。「でも、嬉し泣きもあるから不利じゃん」彼がよくわからない文句を垂れる。「そういう問題?」切った玉ねぎに涙を流しながら、少し笑う。

【No.932 生命賛歌】
「森でクジラの化石が見つかったとするね」波打ち際で彼女が話す。「ある人は『大昔は海だったんだな』と思うし、ある人は『地上で生きるクジラがいたのか』と思うし。要は捉え方次第なのよ」「どういう意味?」「私が人魚で、あなたが人間なのは些末な話ってこと」彼女の美しい鰭が揺れた。

【No.934 浅瀬に仇波】
彼女が砂に文字を書く。「言葉は波なんだって」だから、表記揺れが起こる。意味は移り変わる。「些細でも心がさざめくし、穏やかな気持ちにもなるの」波が砂の文字に隠した願いを攫う。「私ね、あなたのこと本当は──」海になれたら心の揺れも、彼女が笑ったその意味も気付けたのだろうか。

【No.-005 翠緑、炭酸、夏を弾く】
ラムネを飲み干した彼女が、瓶の中に土と種を用意した。彼女のやわらかな手から水が注がれる。「夢があるんだ。教えないけどね」と笑った。一年後、日向に置いたラムネ瓶の中で、小さな花が音を立てて咲いた。夏がまた始まる。名前もないこの花が、 いつか、誰もが知る夢になることを願った

【No.-008 すいさい】
校外学習で使うボンドを買いに行った帰り、予報にはないどしゃ降りの雨が体を濡らした。屋根のあるバス停で休んでいると、先客のおじいさんに「えらいザーザー振りになってきましたね」と飴を渡される。「はい、……どうも」空は未だ晴れない。心にも、地面にも、池のような水溜りを作った

【No.-027 流線形に象る】
十年前、海岸沿いに『エンディング・ピアノ』が漂着した。誰でも弾けるように整備されたピアノは、見た目は酷く寂れているのに、その音色は聴くものに安らぎと終焉を与える。波風が私を流線形に象った。もし、波を切り取ることができたら。なんて笑って。どこからか、うみねこの鳴く声がした

【No.-031 サイダー・ライト】
誕生日を迎えるたびに、記憶や思い出をビー玉にしてラムネ瓶に詰める。透明な水を注ぐと一年間の心が、言葉が炭酸になって弾ける。その泡の一粒一粒に縁や繋がりが含まれていた。そっとラムネを喉に流し込む。誰も知らなかった声が、みんなの元に届くように。弾けた。音を立てて、弾けていた

【No.-047 膜を生む】
ホットミルクの膜が好きだ。大しておいしくはないけれど舌触りが癖になる。私は今、蜃気楼のような湯気の中をさまよっているのか、白紙のような液体の中をたゆたっているのか、それすらもわからない人生の迷子だ。膜の外側にいるのか内側にいるのか、それは、飲み干してから考えることにした

【No.−052 心融】
雪かきに勤しむ町並を眺める。庭先から違う家の庭先へと雪を捨てるおばさんと目が合った。軽く会釈をすると胸の奥が痛む。誰かに相談しているようで結局、降り積もった未練や後悔を誰かに押し付けているだけなのかもしれない。どんなに雪が水に変わっていっても、心は未だに溶けないでいた

【No.−053 幸せの原液】
人は生まれた瞬間に、幸せの原液が入った瓶を神様から渡される。お金や倫理観で割らずに濃い特別を求めてもいい。代わり映えしない薄まった日常を楽しんでもいい。原液をどう使うかの解法は人によって違う。大切なのは、全ての幸せを使い切ること。最後の一液はきっと、おいしいはずだから

【No.-056 君の季節】
今まで君に何度泣かされたことか。どこにいても、何をしていても、ふと瞬間に君の存在を感じて涙が出てくる。忘れたいのに、離れたいのに、初めて君と出会った季節がまたやってくる。このムズムズとした気持ちが解決することはないのだろう。そのとき、花粉が僕の鼻を刺激した。くしゅん

【No.-070 恋と稲妻】
彼女の涙には電撃が宿っている。だから、人を傷付けないように彼女はひとりぼっちだった。ある夜、大停電に見舞われた街は混乱に陥る。展望台に立つ彼女が何回も、何度も、何粒も涙を流せば、街は色が溢れるように明かりを灯す。泣きじゃくったあと、彼女がはにかむ。僕の心に稲妻が走った。

【No.-072 水に流す】
嫌いな親父の背中を流す。会社のため、世間のため。汚れ役を引き受けていた親父は、体を洗うたびに小さくなる気がした。昔は家族のことを顧みない奴だと思っていたけど、俺も父親になった今なら苦労がわかる。「今度、息子を連れてくるよ」「……おう」親父とのわだかまりが排水口に流れた。

【No.-073 夏の風物詩】
秘境の森にウォータースライダーができたらしい。頂上から竹で作られたすべり台に乗り込む。小鳥のさえずり。やわらかな日差し。冷涼とした風。水に流されていると心が洗われていく。ふいに、空から二本の棒が迫って体を挟んだ。大きな口が、僕を――「夏といえば『流しにんげん』だよなぁ」

【No.-108 折り命】
私が折り紙で作ったものには命が宿る。魚を折って部屋を水族館にしたら、母が悲しい表情を浮かべていた。大人になった今、その意味を考える。母も祖母も歳の割にはシワが多かったこと。雨の日は家で過ごす決まりがあったこと。父も祖父もいないこと。全部、命で遊んだ報いなのかもしれない。

【No.-161 ノーチラス】
集落では年に一度、空っぽのコップから透明を飲む仕草をする儀式があると話す。満たすのではなく、失うのを目的にして心に流し込む。遥か昔、この場所は街だったらしい。集落を襲った『何か』を忘れるための所作だと言う。「風化するのは悪いことじゃないよ」溢れた涙から、潮騒の音がした。

【No.-166 寓話】
彼との別れはパスタの茹で方や、カルピスの希釈量といった些細で、些末な出来事である。きっかけはどうでもよかった。離れる理由がある、という理由が欲しかっただけなのかもしれない。飲めないコーヒーに気持ち悪くなる程の砂糖を入れた。苦いことは全て、不明瞭にしてきた後悔を飲み干す。

【No.-179 雨鳴の街(正しい街の破片⑨)】
雨が降ると美しいメロディーが広がった。街に存在する全ての物体は、硬度や材質、温度の違いによって様々な音を生み出す。濡れるのも厭わず、住民達の慣れた手つきによって物体が動かされていく。「旅の方にプレゼントだよ」不規則だった音はやがて、盛大なファンファーレに変わっていった。

【No.-188 潮騒の街(正しい街の破片⑱)】
地面を歩けば波の音がする。空には魚が泳ぎ、景色が揺らめく。感覚がないだけで、この街は確かに海底なのだ。気付いた瞬間、泡を吐いて溺れそうになる。意識が微睡むほどに潮騒が大きくなった。流される私の体を人魚の手が掴む。「大丈夫。落ち着いて」深呼吸をすると、ふわり、海を纏った。

【No.-205 アルカレミア】
人間の自然破壊によって、私たち人魚の泳ぐ海は暮らせる環境ではなくなってしまった。逢瀬を遂げるため、魔女に犠牲を払ってまで人間になる。声や尾を失っても彼女は美しい。やっと結ばれたのに、人間は同性で愛し合うのを非難する。彼女の瞳から流れる涙を掬う。口に含むと故郷の味がした。

【No.-209 流転-7.5m】
飛び込み台から言葉の水を眺める。文字のフォントは尖って、荒波立つ文章には棘があった。一歩、足を進み出さなければ傷付かずに済むだろう。穏やかな揺れの日を選ぶこともできる。だけど、澱みの奥底に沈んだ言葉はきっと美しいと信じて。性懲りもなく先端を踏み込む。今、流転に向かって——

【No.-212 音泳ぐ】
「今日の天気は晴れのち音でしょう」夕方から夜にかけて騒がしくなるらしい。濡れる代わりに雨の音だけが街を打つ。傘を差すとメロディーが弾けて、踵を鳴らせば雫が躍る。イヤフォンを忘れてしまったけどたまにはいいだろう。どんなに足取りは重くても、たんたんとたんと階段を駆け上がる。

【No.-222 行雲流水】
通勤電車の窓から覗く川がとても綺麗で、毎日「最期はここに飛び込もう」と考えていた。仕事に向かう足が動かなくなった日、初めて川を近くで見ると想像以上に汚らしい。こんなものを美しく思っていたことに苦笑するし、醜いものが誰かを生かすこともあると思えば、少しだけ元気が出てくる。

【No.-227 虹焦がす命】
人間は亡くなると傘に変化する。遺された者が涙で濡れないように、後悔で身を焦がさないように。あの日、豪雨による自然災害で多くの犠牲者が生まれた。夏になると故人の魂を弔うため、傘を一斉に飛ばす行事が行われる。色とりどりの傘がふわり浮かぶと、薄暗かった空に大きな虹が架かった。

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652