文化祭公演を中止にした秋の日

こんにちは、秋乃アキです。
今回は大学時代、文化祭公演を中止にした話です。

前提としてまずこちらのnoteをお読みください↓

1.文化祭公演の始動
文化祭公演の時期ですが、私が大学三年生のときだと思っていたらどうやら卒業後の話だそうです。14年分の日記の中に当時の様子が細かく記載されていたので色々と振り返ろうと思います。

大学卒業後、私は保育の専門学校に進みました。研修生やデザイナー、就職。それぞれがそれぞれの道を進む中、OBOGと在校生でもう一度演劇をやろうという話が自然発生します。それが文化祭公演ですね。まだ大学を卒業してから間もなかったのでみんなで盛り上がります。またみんなと演劇ができる。またみんなと会える。気持ちは昂ぶりました。

今回も例に漏れず『はりこのトラの穴』でそれぞれが脚本を探して、なんとか時間を合わせて脚本会議をすることに。在校生はともかく、卒業生達はなかなかヒマを見つけることが難しいため、衣装も小道具も台詞も楽な脚本を私は用意しました。しかし多数決で採用されたのは役柄を飲み込むのが難しいそうな登場人物。独特な雰囲気なものを用意しないといけない小道具。多くの時間がかかりそうな台詞量と動きの脚本でした。

仕事や勉強をしながらはたしてこの脚本を上演することができるのか。さすがにそれがわからない人達ではないと思ったので、おそらく私の熱量が薄かったのだろうと思って受け入れることにします。

2.文化祭公演の中止
だけどやっぱり不安は的中してしまって、メンバーの体調不良、バイトなどが重なって一回たりとも全員が揃って練習することは叶いませんでした。もちろん、今いる人達だけで練習できるところは練習しますが、それでも通し稽古などは一度もできず、また、練習と休憩のメリハリがついていないことが目立って、このころから私の中で不信感の澱が溜まっていきます。

空気が悪くなっていることを感じて、連絡を返さない人もいて、私はメンバー個別に「本当にこのままで公演ができるのか?」と聞くことにしました。一人目「やっぱり、頑張るしかない気がするな。現実的に、とか客観的に、っていうより、やれるだけのことはやりたい。そしてどんな結果が出ても、何かのせいにはしたくない」二人目「もう学校にもホールの使用許可を出しちゃったし、これで最後になると思う。みんなが本気でやればできると思う」とか三人目「みんながもうやれないと思ってるのに、自分だけがやろうと思ってもしょうがないじゃん。みんな本気じゃなくて、そこまでだったんだなと自分は思うよ」と。もう、どの感情で、どこにぶつければいいのかわからなくなってしまって。

この先、本当に文化祭公演をやるのかどうかの話し合いでやっと全員が揃うという皮肉でした。ちなみに上演日はこの日から2週間もありません。ホワイトボードに「やれる」と「やれない」を1人ずつ書き込んでいくことに。私は「やれない」で、何人かが「グレー」ズルい。何人かが「やれる」やれないよ。

部員の1人が「秋乃ができないって言ってる以上、無理じゃない?」と発言。この人は「みんながもうやれないと思ってるのに、自分だけがやろうと思ってもしょうがないじゃん。みんな本気じゃなくて、そこまでだったんだなと自分は思うよ」と発言した人です。「この時期にやるやらないの話をしてる時点でおかしい。マイナスのモチベーションを普通に戻して、そっからプラスにするには2倍も3倍も練習しないといけない」と。違う。あなたの気持ちを聞かせてくれ。と、そのときは聞けませんでした。

なんだよそれって気持ちもあったし、反発したいこともあって。それでも話して話して話して話して、中止になりました。誰かが「誰のせいでもない」と言ったけど、私は「誰のせいでもある」と思いました。後日、演劇部の顧問でもある恩師に中止の旨を伝えます。それでも恩師は「純粋に楽しみにしていたし観てみたかった」とか「やって良かったと絶対に思える。きっと後悔する」とか。

だけど、もうそういう次元の話ではなくて。恩師を悲しませるようなことはしたくない。でも、簡単に決断できるような気持ちで答えを出したつもりはない。散々迷って、散々悩んで、散々苦しんで、やっと出した答えなんです。

練習に来ないくせに、台詞を覚えていないくせに、動きがわかってないくせに、みんな。みんなみんなみんな勝手なんだよ。仕事や私生活が忙しいのがわかった上であの脚本を選んだんじゃないのかよ。とにかく怒りがあって、どうにもならない気持ちでいっぱいでした。

3.文化祭の日
公演は中止になりましたが、卒業してから初めての文化祭に遊びに行きます。恩師に謝って、後輩達のいる屋台を回って、芸人のイベントを見て。部員の1人と「自分の気持ちは変わらない」「秋乃は一度決めたら簡単には変わらないのはわかる」「君には嘘をつきたくない」「今の言葉嬉しかった」「もうこれをこうする。だからできるってレベルじゃない」「秋乃とは演劇部だけの関係じゃないから」「ごめんって言っても困るよね」と。たくさんの行き場のない感情が。得体のしれない思いが溢れてきて。このころは泣いてばかりいるなぁ、と。

その日の夕方、演劇部メンバーと居酒屋に行くことになりました。私にはすごく仲の良い、そして一番の友人だと思っている人がいますが、本来、その友人に文化祭公演のポスターを頼む予定だったんです。でも中止になってからは気まずくてなかなか話もできずに今日に至ります。だけど飲み会の席で「先生の研究室で話を聞いたときにはすごい腹が立ったけど、秋乃が一番演劇のことを考えてがんばってんだろうなと思った」と言ってくれて、とても救われた気持ちになりました。

それから数年、当時の演劇部メンバーで上演することは一度もありませんでしたが、今でもたまに連絡を取り合っています。この記事を読んでくれるかはわかりません。だけど、どうか、見つけてほしいです。またみんなで集まって演劇の話がしたいな。

ということで、今回はこの辺で。
お読みいただきありがとうございました!

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652