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140字小説 No.836‐840

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【No.836 野生電話】
野生の公衆電話も絶滅危惧種になってしまった。スマホやキャッシュレスの普及に伴い、エサの硬貨やテレフォンカードの減少がきっかけである。今はわずかな公共施設でしか飼われていない。お腹を空かせた公衆電話が鳴き出す。賽銭箱のお金を漁る姿を見ても、携帯を手放す気にはなれなかった。

【No.837 廃恋回収】
同棲していた部屋と思い出を古物商に引き払う。翳りや生々しさが残る403号室は、適当な恋しか知らない若者に高く売れるそうだ。僕達の愛が金に変わっていく。不自然に距離の空いた隣室を眺める。縁起が悪いからと存在しなかった404号室も、実は同じ理由で片付けられたのかもしれない。

【No.838 言葉を編む】
ほつれた言葉を直す。古着を新しい服へと仕立てるように、窮屈になったら枠組みを壊せばいい。言葉の意味は常に変わっていく。誤用、誤読もその時代の使い方には合ってないだけなのだ。相手に届くように、自分が伝えやすいように言葉を作り変える。波も、雲すらも、永遠の形はないのだから。

【No.839 ブロックノイズ】
祖母がテレビの砂嵐を見つめて、真夜中に手を叩きながら笑っていた。振り向くと母が虚ろな目をして立っている。「おばあちゃんはもういないのよ」うわ言のように話すそれは、一体どういう意味なのだろう。濁った目の祖母がゆっくりと振り向く。「お前に子どもはいないんだよ」画面が乱れた。

【No.840 スクールゴースト】
親しくもない同級生に、好きでもない写真を撮られたとき、嫌悪より先にピースサインを作ってしまう自分を恥じた。楽しくもないグループトークに、幸せでもない画像を晒されたとき、私達の中学校生活が筒抜けになっていくのを感じる。仲が良いねと笑う無知な先生に、馬鹿な私も笑顔を返した。

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652