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140字小説 No.≠071‐075

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【No.≠071 ヒヨコの国】
天気予報士が「今日は晴れのちヒヨコです」と告げる。ふと、頭の上に一匹のヒヨコがぶつかった。ぴよぴよ鳴くのを合図に、空から色とりどりのヒヨコ達が降り注ぐ。今では人間よりもヒヨコの数の方が多いくらいだ。ヒヨコ小学校。ヒヨコ遊園地。ヒヨコ株式会社。世界中がヒヨコの国になった。

【No.≠072 遠雷】
月に数日程お店を開く金魚屋さんが好きだった。ライラックの香り。漁り火の光。セルリアンブルーの髪飾り。お店には『感傷』が売られていた。絵羽模様の和服だけが印象的で、青年の顔を思い出せずにいる。初恋か、あるいは嫉妬にも似た気持ちなのかもしれない。店先のびいどろ風鈴が揺れた。

【No.≠073 最終電車】
最終電車に空き缶が転がる。みんな関わりたくないと心の中で願っているのだろう。誰に拾われるでもなく。誰か捨ててくれるでもなく。存在に気付いてほしいかのように転がる空き缶が、まるで私の現状と重なる。最初は満ちていたはずの缶を、今は空っぽになってしまった私がそっと拾い上げた。

【No.≠074 タルトタタン】
待たされるのが嫌いなのか、彼女の食べる早さには驚かされる。でも、デートのときは僕が待つことが多い。「食べ終わったら帰るよ」「うん」いつも先に食べ終わる彼女は僕の顔を確認しながら、甘くて少しほろ苦いタルトタタンを、小さく、小さく分けて、数秒、数分と時間をかけて食べていた。

【No.≠075 原罪地】
夫の転勤を機に、遠い昔、私が住んでいた街へと向かう。大切ではなくなってしまった彼と同棲していた街だ。見知った景色と、見知らぬ建物が混ざり合っていく。現在から過去へ、過去から現在へタイムスリップした気分になる。『電車は記憶行きです』なんて、そんな歌詞の曲もあった気がした。

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652