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140字小説 No.-156‐160

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【No.-156 恋の一手】
高校の帰り道、幼なじみが急にグリコじゃんけんを始める。グーかパーしか出さないので僕の圧勝だった。けれど、ポケットから覗く小箱に気付いてとっさにパーを出す。チョキで勝った彼女が「チ、ヨ、コ、レ、イ、ト!」と頬を染める。あと、数歩の距離感。次に出す僕の手はもう決まっていた。

【No.-157 夢泥棒】
寝起きに頭がぼんやりするのは、夢泥棒に夢を盗まれた影響だ。良い夢が続くと現実に戻れなくなるし、悪い夢が長いと虚構で亡くなってしまう。優しい人には狡い奴から盗んだ良い夢を、狡い奴には優しい人から盗んだ悪夢をばらまく。夢泥棒は現実と虚構、正義と悪のバランスを取る義賊なのだ。

【No.-158 アンチノミー】
同棲も彼との別れで終わる。不要なものを捨てる度に、心の中に淀みが積もるのはどうしてだろう。思い出を分け合うと言えば聞こえはいいが、嫌いを押し付けてるだけなのかもしれない。私達でひとつずつ得たものを、私達がひとつずつ失くしていく。鍵を開けるのも閉めるのも全てこの手だった。

【No.-159 恋の魔法】
小学生のとき、天体観測中に先生が「今からやることは内緒ね」と微笑む。細い手が空を覆う。三日月が雲に隠れる。気付けば先生の手に黄金色の分度器が握られていた。あれはマジックだと思うけど、幼い僕には魔法使いに見えた。大学生になっても胸が高鳴る、先生にかけられた恋の魔法だった。

【No.-160 命を分け合う】
双子の姉とは高校生になっても仲が良い。なんでも半分こするほど私達は共有し合った。好きなお菓子、ファミレスの会計、嫌いな野菜、どしゃ降りの日の傘。彼氏だったものを森の奥深くまで運ぶ。泣きながら穴を掘る私の側で、姉は理由も聞かずに手伝ってくれる。「大丈夫、罪も半分こだから」

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652