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140字小説 No.501-505

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【No.501 逢魔が刻】
排水溝に流れる花弁を美しいと思った日から、僕にだけ夕陽がやってこなくなった。かくれんぼの時間は長くなったし、本を読む時間は短くなった。大人になった今、子どもの頃に感じた橙の余韻もなくなって、あるのは明確な朝と夜だけになる。今更、夕陽が、見えなくなっただけなのだと気付いた

【No.502 楓】
昔から傘を差すのが苦手だった。雨や風に煽られて吹き飛ばされそうになる度に、傘以外の『何か』も吹き飛ばされそうな気持ちになってしまう。失わないように、奪われないように、必死で傘にしがみつく。不確かな不安の正体はもしかすると、単純なことで生き辛くなる、軽い魂なのかもしれない

【No.503 エウロパ】
言葉の葬儀が執り行なわれる。世界から『夢』という概念が亡くなったそうだ。夢を見たせいで、夢を持ったせいで、夢を追いかけたせいで人生が駄目になる。人々から忌み嫌われた言葉は四十九日後に意味を失って、記憶から抜け落ちていく。僕にも昔からの夢があった。あった気がしたはずなのに

【No.504 らむねこ】
らむねこが夏を告げる。鈴の代わりに喉元のビー玉を鳴らすらむねこは、薄青い透明な体をしていた。頭を撫でてやると「しゅわ、しゅわ」と気の抜けた声で甘えてくる。夏の間、高校生の男女が一緒にいるときにだけらむねこは現れる。弾ける音がした。大人には見えない、不思議な不思議な生き物

【No.505 わんこそば】
わんこそばに挑戦する。お椀の中に座るわんこの頭を撫でては、机の上に優しく置いてあげる。空になったお椀にわんこが座ってはエサをあげたり、一緒に遊んだり、しつけをしたりと次々にわんこをおかわりしていく。そうして100匹目のわんこを堪能したあと、僕は幸せでおなかいっぱいになった

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652