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140字小説 No.-111‐115

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【No.-111 三分間の幻】
カップ焼きそばにお湯を注いでからの三分間、湯気に亡くなった彼女の姿が見えた。懐かしい記憶が蘇ってくる。視界が曇ったのは煙のせいなのか、もう実在しない人に縋ったからなのか。彼女との思い出を僕自身の手で排水溝に流す。二人で分け合ったカップ焼きそばを、今では一人で食べるのだ。

【No.-112 月の瞳】
彼女の瞳には月が宿っている。大きくて、静かな光が揺らめいていた。実はこの世界に月なんて存在しない。彼女が空を眺めている間だけ、瞳の月が空に映し出される。目を逸らしているときは僕が偽物の光が用意していた。共犯者めいたように彼女が目を細める。満月だった瞳が三日月に変わった。

【No.-113 泥塗れ】
仕事もせずに絵描きを目指している彼に「贅沢は言わないから、慎ましく生きていたい」と皮肉を込めた。彼はキャンバスから目を離さずに「慎ましく生きる事が贅沢だと思わない時点で、実に贅沢だと思うよ」と吐き捨てる。どろどろに腐敗した絵の具が、私達の行く先を暗示しているようだった。

【No.-114 真っ赤な箱】
僕が心の中で願えば、着払いで何でも届く。お店で売られているものから、失くした写真や誰かの日記すらも。本当に、どんなものでも。隣の部屋から憧れのお姉さんの声が聞こえてきた。彼氏が憎い。あいつさえいなければ。そのとき、外でゴトンと音がした。扉を開けると真っ赤に染まった箱が。

【No.-115 落とし夢】
私の手で触れた落とし物には命が宿る。といっても、持ち主の元へ帰っていく程度だ。足下には誰かの夢が転がっていた。昔は私にも夢があったっけ。どうか、本当に叶えたい人の元へと帰れるように願う。ふわりと浮かんだ夢が私の胸に辿り着く。とてもあたたかくて、とても、懐かしい夢だった。

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652