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140字小説 No.896‐900

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【No.896 サプライズボックス】
子どものころは親父の手製びっくり箱で無邪気に驚いていたっけ。反応が気に入ったのか、俺が中学生になっても親父は驚かせ続けた。それが煩わしくて、いつしか無視するようになったけど。反抗期だったんだ。なぁ、早く棺桶から飛び出してくれよ。何度でも、涙を流しながら驚いてやるからさ。

【No.897 フラマリア】
魔女が与えた種から花を咲かせば願いを叶えてもらえる。なのに私だけ芽が出ないことをみんなが馬鹿にした。約束の日、魔女に鉢を差し出すと、正直者の私には願う権利があると微笑む。種なんて本当は育たない。造り物を植えていただけ。それでも、望めるならみんなに本物の花が咲くよう祈る。

【No.898 通心電波】
携帯のカメラにだけ彼女が映るようになって何年が経つのだろう。レンズが彼女を捉えた瞬間に声や、匂いや、体温を感じるようになる。画面が割れて、スピーカーが壊れて。機種が古いと馬鹿にされても、この携帯の中にしか彼女はいないのだ。また今日も光をかざす。失ってしまう最後の時まで。

【No.899 祝辞】
僕が小学生のとき、幼なじみの家で遊ぶことが多かった。彼女と同棲を始めた頃は言い慣れず、帰宅する度に「お邪魔します」と間違えてはお互いに笑い合っていた。いつの日からだろう。僕の「お邪魔します」が「ただいま」になって、彼女の「また来てね」が「いってらっしゃい」になったのは。

【No.900 義光】
義光を作ってもらうため、装具士の女性に輝き方や明るさを相談する。カーブミラーに浮かんだ夕陽も、水溜りに沈んだ月も本物ではない。だけど、昏い色彩に救われる日もきっとあるのだ。女性の淑やかな指が僕の胸を打つ。常夜灯ほどの淡さが心に広がる。まがい物でも、それは確かな光だった。

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652