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140字小説 No.451-455

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【No.451 羽化(いろは式「う」)】
生まれたての言葉はまだ弱々しかった。意味の殻を破って、新しい使い方へと変容していく。『やばい』『普通に』『役不足』いくつもの言葉が羽化しては違う存在になった。新種はまだ認知度も低く、なかなか意味が伝わらない。そっと言葉を掬う。やがて誰もが使う存在になるまで育てると決めた

【No.452 ゐらない子(いろは式「ゐ」)】
「ゐ」と「ぬ」の書き分けができなかった。昔から要領が悪くて迷惑をかけ続けてきた私は、見事に「いらない子」の烙印を押されてしまう。くしゃくしゃになったプリントの、すみっこに書かれた赤文字を直視できなくて、「い」を塗り潰した上から「ゐ」と書き直す。書き直して、丸めて捨てた

【No.453 野良夢(いろは式「の」)】
望まれて飼われたはずなのに、最近では野良夢を見かけることが多くなる。人々から「そんな夢は恥ずかしい」とか「どうせ最後まで育てられない」とか心ない言葉を投げかけられた。夢を飼うのにはお金がいる。才能がいる。自慢するためだけに飼い始めた夢が、街の至る場所で鳴き声を上げていた

【No.454 お蔵入り(いろは式「お」)】
「おいしそう」と私がオクラ入りうどんを頼むと、芸人である彼が怒り出す。『お蔵入り』を連想させるからだそうだ。他にも『尾も白くない』と真っ黒な犬を嫌ったりする。「俺はいずれ能のある芸能人になるんだ」と息巻くけど、私から見れば小さい縁起を気にするような芸NO人でしかなかった

【No.455 くるみ割り人形(いろは式「く」)】
くるみ割り人形でくるみを割っていると、木の上の家にリスが忍び込んでくる。僕と目が合うと割れたくるみをさっと奪って消えていく。そんな関係が続いたある日、目覚まし代わりにセットした音楽で起きると、すでにリスが横にいた。流れていたのはチャイコフスキーの『くるみ割り人形』だった

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652