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140字小説 No.-226‐230

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【No.-226 恋慕喫茶】
大学の後輩に告白するため高級喫茶店に訪れる。この緊張は大正浪漫あふれる内装のせいだろう。「僕と付き合ってください」嫌いなコーヒーを飲む手が震えた。後輩がカップに角砂糖を落とす。「苦さも、パンケーキも、不安も半分こ」声が上擦る。「幸せも、お会計も半分こです」優しく笑った。

【No.-227 虹焦がす命】
人間は亡くなると傘に変化する。遺された者が涙で濡れないように、後悔で身を焦がさないように。あの日、豪雨による自然災害で多くの犠牲者が生まれた。夏になると故人の魂を弔うため、傘を一斉に飛ばす行事が行われる。色とりどりの傘がふわり浮かぶと、薄暗かった空に大きな虹が架かった。

【No.-228 人魚水葬】
人魚に恋した青年は海で暮らしたいと願います。美しい声も、鰭も、失うにはかけがえのないもの。ならば、代償を払うのは醜い自分の方。青年は魔女に祈り、感情を犠牲にして海に潜りました。人魚は悲しみます。同じ世界で生きられなくても、ありのままの青年と過ごせるだけで幸せだったのに。

【No.-229 少女琥珀】
少女琥珀展を鑑賞する。琥珀糖で模した少女は色鮮やかで、気味の悪いほど生々しかった。怒っている少女は赤、泣いている少女は青。幸せそうな少女は緑。感情が、命が、不透明な体に混ざっている気がした。会場を満たす甘い香りが饐えていく。そういえば、最近は行方不明者のニュースが多い。

【No.-230 息衝くような速さで】
誰もが当たり前にできることを『息するように』なんて例えるけど、私は昔から呼吸が下手だった。息を吸うのか、吐くのか、時々わからなくなって苦しくなる。生きる為の儀式を無自覚に行える人達が恨めしく、羨ましいと妬む。だから冬は嫌いだ。吐いた白い息が、濁った私の性根を染め上げる。

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652