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140字小説 No.≠031-035
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【No.≠031 ボイジャーレコード】
録音された彼の声を再生した。繰り返し、繰り返し聞いて、だいぶ古い機種だから声が劣化している。けれどもう、この声しか届かない。あの日、私が怒って家を飛び出さなければ。『「もしもし。今日は君に大切な話があるんだ。僕さ、本当は君のこと――」一件の、メッセージを、終了、します』
【No.≠032 水憐】
飼い猫が水槽の中の金魚を食べていた。その光景がとても美味しそうに思えて、私も倣うように口へと含む。ビチビチと胃の中で暴れる感覚が不愉快だった。やがて私の体が透けていき水槽のようになっていく。飼い猫が私のお腹を引っ掻く。体の中ではカメやネオンテトラが窮屈そうに泳いでいた
【No.≠033 不恋ゴミ】
彼への恋心を不燃ゴミの袋に入れて捨てた。これで綺麗さっぱり忘れることができるだろう。だけど袋は回収されなかった。次の日、粗大ゴミに捨てる。袋はまた置かれていた。私の恋心なんて楽に燃やせるし、そんなちっぽけなものだったのか。けれど、だからこそ捨てずに大事にしようと思えた
【No.≠034 桜波】
染井吉野が照らされて光を纏う。桜の花びらが地面を彩って、風が吹くとさざ波のように揺らいだ。土の中に彼から貰った結婚指輪と思い出を埋める。『狂ったように咲いてるけど いずれは散りゆく運命です』とは誰の曲だったか。桜の花びらが頬を撫でた。さよなら。私の、大切になれなかった人
【No.≠035 あいのれきし】
今日で彼とはお別れだ。旅立つ彼を見送りに駅のホームまで付き添う。 警報が鳴る。遮断機が沈む。赤色灯が夜を浮かび上がらせる。電車と共に終わりが迫った。寂しいけど、彼が決めたことなら受け入れよう。すぐに私もいくからね。「さよなら」「さよなら」彼の背中を、私の手でそっと押した
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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652