140字小説 No.786‐790
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【No.786 フリーフォール】
感情と浮力が繋がってから数年が経つ。嬉しいことがあれば体がふわりと浮かんでいく。幸せだけど貧乏な私と、裕福だけど不幸な彼は、何もかもを犠牲にして駆け落ちした。手を取り合って、自由な空をかろやかに泳ぐ。身分違いの恋だったけど、しがらみや呪縛から今、私達は解き放たれたのだ。
【No.787 自己肯定缶】
自己肯定缶が売っていた。千円と高めだけど何事もチャレンジである。なかなか入らないお札に苦戦して、取り出し口に引っかかった缶を意地でも取り出す。プルダブは頑丈で爪が剥がれそうなくらいだ。酷くまずい味にむせながらも飲み干すと、がんばった僕の心は自己肯定感で満たされていった。
【No.788 ネット依存症】
特に意味もなくスマホを眺める。新しい呟きが投稿されていないか。友人からのメッセージを見逃してないか。このままではネット依存症になってしまう。様々なホームページを訪れて、電子掲示板に書き込んで、対策アプリをいくつも導入して、一心不乱にネット依存症の治し方をネットで調べた。
【No.789 キリトリ線】
切り絵作家の記事が載っていた。命そのものを切り取ったような絵は、おぞましさすら感じる。「人間をモチーフにした作品がないのは、何かこだわりがあるのですか?」確かに、作家の切り絵は実在しない動物ばかりだ。本人いわく犬や猫と呼ぶらしい。「えぇ、私もまだ生きていたいですからね」
【No.790 ルックバック】
仕事を終えて電車に乗り込む。携帯から目を逸らすと窓に夕陽が映った。思えば私が高校生のとき、画面ばかり夢中になって、彼に手を引かれながら歩
いていたっけ。だから、不注意な私の代わりに彼は亡くなってしまったのだ。携帯を閉じる。目の前の青春より大事なものってなんだったんだろう。
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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652