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140字小説 No.901‐905

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【No.901 記念撮影】
カメラを構えると彼女は不機嫌になる。気分転換に『はい、チーズ!』の由来は、撮影者が「配置、良いっす!」と褒め、思わずにっこりしたのが始まりという雑学を披露する。「嘘だけどね」「なにそれ」呆れながらも、少しだけ口角が上がるのを見逃さない。彼女のほほえむ姿を、写真に収める。

【No.902 繋ぐ】
彼女は走るのが苦手なのに、バトンの受け渡しだけは得意だった。自分のことはどうでもいいけど、誰かのためにならがんばれるから。彼女の臓器移植で私は今も生きている。最期にふれた彼女の手は、何もなかった私に医者の夢と未来を与えてくれた。これまでも、これからも、命のリレーは続く。

No.903 幸せの勘違い
「今、幸せ?」美容院のお兄さんからふいに訊ねられる。鏡を見ても彼はのんびりと髪を梳いてるだけだ。確かに私は惰性的な日々を過ごしているのかもしれない。それでも大好きなお兄さんといる時間が、指にふれている瞬間が私にとっての特別だ。「はい。しあわ、」「いらっしゃーせー」「あ」

【No.904 恋るつぼ】
サラダを取り分けると褒められたけど、野菜嫌いだから私の量を減らしたいだけだ。なのに、男の子は「もっと食べれば?」と勝手によそう。空気が読めない癖に、左利きの私を左端に座らせたり、飲めないお酒をソフトドリンクに変えたり。私の気も知らないで、そういうところが全部……嫌いだ。

【No.905 ルノアール】
元カノ達が愛煙家だったせいで、嗜まないのに喫煙席と答えてしまう。食事を終えてからも、彼女は陰りのある表情をしていた。移動した禁煙席はどこか臭く、肺に淀みが溜まっていくのはなぜだろうか。別れる相手のことなんかどうでもいいはずなのに。未練を吸って、憐憫を吐く。思い出が燻る。

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652