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140字小説 No.811‐815

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【No.811 成長を辿る】
久しぶりに帰省すると、縁柱に身長計代わりの傷を見つける。僕のではない。下から順に刻まれた跡は十歳、九歳、八歳と若返っていく。おかしい。普通、逆じゃないか。これではまるで──幼い頃、誰かに遊んでもらった記憶と、いつのまにか僕に弟がいたことは、まぁ、関係のない話なのだろう。

【No.812 テレパス】
「言葉ってふしぎ。声に出さないと聞こえないし、紙に書かないと見えないし」彼女が点字をなぞりながら本を読む。言葉にふれるとは一体どんな感覚なのか。「言葉以外で言葉を伝えるにはどうすればいいんだろう。例えば、  」彼女の指が僕の口を塞いだ。手を繋ぐ。「これで、伝わるから」

【No.813 トイレットーク】
トイレの電気が点いていたので消すと、亡くなった親父の怒鳴り声が響いて驚く。急いで開けても誰もいなかった。その日から扉越しに高校の話、彼女の話、将来の話などを語り明かす。「母さんのこと、よろしく頼むよ」「うん」もうすぐ四十九日だ。未練を断ち切るために、思い出を水に流した。

【No.814 声葬】
私の声が嫌いだから人の声を盗む。誰彼かまわず奪った声は、一文字ずつ切り貼りした文章のように見難くて、醜い声になってしまった。なのに、気付いてほしくて言葉が止まらない。耳も口も塞ぐのに両手じゃ足りなかった。泣き喚いてしゃがれた声を、素敵だと褒めてくれる人がいたはずなのに。

【No.815 メランコリー】
朝の冷たい風を頬に受けながら、これまでの日記を読み返す。午後には美しい光を纏った水差しから夕暮れを飲み、眠る少し前に星型のビスケットを食べる。終わったっていい『今日』を日記に綴って、始まらなくてもいい『明日』をそれでも待っていた。おやすみなさい。どうか、悪くはない夢を。

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652