140字小説 No.-231‐235
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【No.-231 星天前路】
婚姻届は夫婦になるためのラブレターかもしれない。彼とは短冊に願って付き合えたから、入籍は七夕の日と決めていた。窓口預かりで受理は次の日になるけど。他人や家族じゃない今に不安を覚える。それでも、目が覚めれば天の川を超えられるはず。灯りを消して、運命の赤い短冊を握りしめた。
【No.-232 ザザ降り、ザザ鳴り。】
運動会のリレーでバトンを落としてから、私の心には雷雨が降り続く。乾いた地面を歩けば水音がして、生きづらさを感じる度に雷鳴が落ちる。雨なんか降ってないよ、雨なんか降ってないよ。そう言い聞かせても、あの日の後悔は止まないのだ。傘を差す癖が抜けない。雨なんか降っていないのに。
【No.-233 喝采】
大学時代、主役を務める演劇で浴びた拍手喝采が忘れられない。それから、呪いのようにぱちぱちと響く音を求め始めた。爆ぜる焚き火、弾ける綿菓子、部屋の家鳴り。人生を間違えなければ、僕は今でも主役でいられたのだろうか。パチンコを打つ音が拍手と重なって、未だ見せかけの輝きに縋る。
【No.-234 夢の粒】
散った夢の欠片はこんぺいとうになる。小説家、イラストレーター、美容師。粒は職業により色も、味も、大きさも千差万別だ。口に含むとパティシエになって洋菓子を作るイメージが膨らむ。私の諦めた夢も、誰かの救いになってほしい。もう一つ食べると懐かしい味がする。そうだ、私の夢は――
【No.-235 恋琴術】
高校の修学旅行で沖縄に訪れる。泳げないので砂浜で休んでいると、委員長が頬にペットボトルを当ててきた。「炭酸、苦手なんだけどな」「知ってるよ」いつもは暗い表情なのに、熱に浮かされてか意地悪く笑う。体が火照る。海がさざめく。嫌いだった夏から、彼女が恋とキラキラを生み出した。
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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652