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140字小説 No.≠076‐080

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【No.≠076 鳴き声問題】
「『ンメ〜』これは羊の鳴き声です」「はい」「『メェ〜』これはヤギの鳴き声です」「なるほど」抑揚の位置で見極めればいいのか。「では次に上級問題です。『ンメェ〜』これは誰の鳴き声でしょうか?」「……ヤギ、ですか?」「いいえ。これはおいしい物を食べたおばあちゃんの鳴き声です」

【No.≠077 歳下の先輩】
数年ぶりに彼の部屋へと踏み入る。高校時代の先輩だった。針を失った時計。棚から崩れた文庫本。綿の出た猫のぬいぐるみ。交わし合った手紙。全てがあの日のまま止まっていた。割れたフォトフレームを元に戻す。写真の中の私達が私を見ている。いつのまにか、彼よりも歳上になってしまった。

【No.≠078 幽明かり】
あなたの少し後ろ側を歩く。背中へと伸ばした手は、月に見られている気がして引っ込めてしまう。たまに振り返って、私がいることに安心するあなたの表情が嫌いだった。欠けたのは月なのか、思い出なのかわからずに。もう子どもじゃないのよなんて思いながら、私は夜道で泣きじゃくっていた。

【No.≠079 揺蕩う】
数年ぶりに祖母の家へ行く。私の好きなお菓子。私の好きな番組。私の好きなお味噌汁の味。こんなにも私の好みを覚えているのに。やわらかな笑顔が余計に辛かった。ゴミで足場のない床に立ち尽くす。「初めて会った子なのに、懐かしい感じがするねぇ」どうして私のこと忘れちゃったんだろう。

【No.≠080 後ろの正面】
「本日はどのようなご相談でしょうか?」藁にも縋る思いで何でも屋に話す。「不気味な電話が掛かってきたり、ブログに迷惑なコメントを書き込んだり」何でも屋の視界が定まらない。「ストーカーなんだよ」俺の目を見てくれ。「それは」「え?」「後ろにずっと立っている女性のことですか?」

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652