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140字小説 No.761‐765

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【No.761 喪失機構】
季節税を払えない街が増えて、この国の四季は境をなくしていた。桜が降り積もる図書館。雪に埋もれた村。風鈴の音が鳴り響く海。皮肉なことに、観光名所となって税を納めることができても、一度壊れた季節が元通りになることはない。旅行小説家が書いた本は、いつしか歴史の標になっていた。

【No.762 還る言葉】
「節言にご協力ください」とアナウンサーが深刻な顔で告げる。何気ない言葉で誰かを傷付けたり、匿名の文章で誰かに傷付けられたりしないように、不用意な発言は控えるべきだと促す。陰口、密告、誹謗中傷。棘のある言葉を使う人は年々と増えている。心の許容量は限界を迎えようとしていた。

【No.763 白雪】
「鏡よ鏡。世界で一番美しいのはだぁれ?」「はい、貴方様です」魔女は悲しい表情を浮かべました。その鏡は誰もが美しい姿に映ることを知っているからです。けれど、鏡の言葉は真実でした。人と比べる醜い自分に流した涙と、素直になれない純粋な心が。ただ、ただ、それは美しかったのです。

【No.764 お供え物】
夫の遺影の前から、お供え物のお菓子や果物が消えていることに気付く。供え忘れたのか、息子がこっそり食べたのか。それとも、誰かが?得体の知れない恐怖に背筋が凍りつく。こんなとき、夫がいてくれたらと遺影を見つめる。「まぁ、あなただったのね」遺影の中の夫がぶくぶくと太っていた。

【No.765 自分探し】
自分探しの旅に出る。背の高い身長。これじゃない。派手な髪色。これじゃない。スリムな体型。これじゃない。整った顔立ち。これじゃない。洞窟の中で衝撃を受けた。無残な見た目なのに、それが僕だと理解できる。事件に巻き込まれたのだろう。死体の山の中から、やっと僕の肉体を見つけた。

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652