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140字小説 No.≠086-090

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【No.≠086 花降流】
街では雨の代わりに花が降ります。夏は向日葵。秋は紅葉。冬は山茶花。気温や空模様によって種類は変わりますが、大体は季節に合った花が降り注ぎます。冬の寒さが厳しくなったある日、季節外れにも桜の花びらが舞い始めました。きっと、みんな、春の訪れが待ち遠しかったのかもしれません。

【No.≠087 エウロパの底】
「どこかの国では、前世で結ばれなかった恋人同士が『来世は一緒になりましょう』という願いを込めて、双子で生まれてくるんだって。だから、擬似的な結婚式を挙げるんだってさ」駅のホームで双子の妹が泣いていた。いつか、僕達もその国へ行くことができるのだろうか。始発のベルが鳴った。

【No.≠088 淀んだ席】
音漏れ。駆け込み。転がる空き缶。押し退けて、突き出して、抜け出そうとして。足組み。飲酒。背中のバッグ。誰もが、みんな。どれもが、煩わしくて。香水。割り込み。怒鳴り声。電車の中に閉じ込められたのは、乗客だけじゃなかったのかな。隣の席には悪意が座っているようで哀しくなった。

【No.≠089 繋がる、隔てる。】
私の住む街に同級生の女の子が遊びにきた。「まだ公衆電話があるよ」緑の受話器から私の携帯に電話をかける。「私の声は届いていますか?」彼女がおどけながら笑う。「私の思いは届いていますか?」なんて、透明な箱を隔てて言葉が消えていく。私もおどけながら、打ち明けてしまいたかった。

【No.≠090 羽疎吐き】
私の背中には、嘘をつくと成長する羽が生えていた。あなたのことが好きです。成長する。みんな幸せならいいのに。成長する。会社を風邪で休んだ。成長する。明日から人生をがんばろう。成長する。こんな嘘しかつけない私は、消えて失ってしまいたいと思った。なぜだか、羽は成長しなかった。

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652