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140字小説 No.696‐700

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【No.696 斜陽】
「終わりよければ全てよし」という言葉が苦手になってしまったのは、それまでの挫折や後悔を無意味だと笑われたように感じたからだった。どんなに始まりが悪くても、きっと、その過程に意味があるはずだと願う。新しい年が始まる。冷たい扉を、冷たかった手で開ける。鐘の音がどこかで鳴った

【No.697 約おせち料理】
貧乏性な叔母さんがおせち料理を出してくれたので驚く。でもそれより驚いたのは中身と叔母さんの説明だ。ところどころに穴が空いた『あなぼこ』や、身がえぐれた『くりぬきんとん』や、たまごの白身だけを使った『だけ巻き』といった少し貧相なものばかり。おせちじゃなくておけち料理だった

【No.698 滲む】
「昨日なに食べた?」の質問に対してすぐに答えられないのは、記憶力が衰えたからではなくそれが当たり前になったからなのかもしれない。食べることも、楽しむことも、生きることも。当たり前になってしまったからこそ色褪せていく。忘れていることはいつだって、忘れてはいけないことなのに

【No.699 謝罪会見謝罪会見】
不倫の謝罪会見を開いた。けれど反省の色が見えないだので謝罪会見に対する謝罪会見を開く事になった。態度が悪い。謝罪会見を開く。お辞儀が浅い。謝罪会見を開く。謝罪会見に対する謝罪会見に対する謝罪会見に対する謝罪会見を開く。俺は何に対して謝っているのかわからなくなってしまった

【No.700 春疑き】
失恋したので春のパウダータイプを購入する。ペットボトルの中に春パウダーと、甘酸っぱさやほろ苦さを混ぜて涙で溶かす。フタを開けるとぽかぽかした陽気が部屋を包んだ。桜の花びらが舞う。息を吸って、淀みを吐く。新しい出会いを、新しい生活を夢見る。もう一度、春を思いきり吸い込んだ

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652