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140字小説 No.≠206-210
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【No.≠206 命の一雫】
砂漠で乾涸らびて、朽ちて、枯れそうな私に、あなたは涙を与えてくれました。花を咲かせた私は民衆から崇め称えられます。みな素晴らしい服と幸福で着飾っているはずなのに、なぜだか、あなたよりも見窄らしく感じました。醜い私の代わりに乾涸らびて、朽ちて、枯れてしまったあなたよりも。
【No.≠207 月の陰る】
数年ぶりに帰省すると、夜のベンチに女性が座っていた。髪は乱れて、目元は黒ずんで、体は痩せ細って。私に気付いた女性が驚いた顔で逃げ去っていく。あの人は確か、小学生時代の同級生だ。月のように静かな明るさも、今は面影の一つも残っていない。あったはずの思い出が夜に融けていった。
【No.≠208 風あざみ】
小学生のとき男の子と一緒に、おもちゃの指輪と『大きくなったら僕と掘り返して、君にプレゼントするね』という約束を庭先に埋めた。でも、彼は結婚したと風の噂で聞いたことがある。私はあの日からずっと覚えていたのに、忘れたのはあなたの方じゃない。私の目から、涙がそよそよと流れた。
【No.≠209 蝶の行く末】
ベランダで流蝶群を待っていると、彼から「行けたら行く」とメールが届く。月から光の残滓が溢れて蝶が生まれる。色彩豊かな蝶が流れ星のように、群れを成す光景はとても美しかった。眠い目をこすりながら、三日月に変わっていくのを眺める。彼の言葉を信じて、私は寒さに震えるのだ。
【No.≠210 夢ひさぎ】
小説家になる夢を捨てきれずに、故郷から逃げ出した僕の元に母から手紙が届く。挫折してもすぐに帰れると思っていた故郷が遠くに感じた。あの日から数年、手紙は読むことができずにいる。何か不幸があったのかと思うと母を言い訳に、中途半端な夢を諦めてしまいそうになるのが怖かったのだ。
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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652