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140字小説 No.466-470

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【No.466 指切り(いろは式「ゆ」)】
夕飯を作っていると夫が帰ってくる。ふと、指輪がないことに気付いて問い詰めてみると、居酒屋で落としてしまったらしい。お酒の他にも香水の匂いが漂ってくる。コートには長い髪の毛が付着していた。浮気している。包丁で人参を刻む手が強まる。もう浮気しないように、私は夫の指切りをした

【No.467 メリュー(いろは式「め」)】
名作映画のリバイバル上映があるらしい。昔、彼女との初デートで観た、僕達にとってはつまらない映画だった。あれから数年が経つ。街も、夢も、人も、思い出も、全てがあの頃と変わっていた。あの日みた映画がハッピーエンドだったのか、バッドエンドだったのか。今となっては忘れてしまった

【No.468 みんな(いろは式「み」)】
「『みんな幸せ』が無理なことなんてわかってる。だけど『みんな幸せ』って願うことは悪いのかな?」と、自殺した同級生の言葉を思い出す。みんな、休日を潰されたことに嫌気がさして。みんな、数日したら彼女のことを忘れてしまう。「みんな幸せ」の「みんな」の中に、彼女だけがいなかった

【No.469 仕舞う魔(いろは式「し」)】
白か黒かで物事を分け隔てて、なんでもかんでもお腹に収納してしまう『仕舞う魔』がいるらしい。不倫したミュージャンは、曲に罪はないと白になって、優しい嘘は、嘘は嘘ということで黒に判別される。正しい感情と間違った情報が『仕舞う魔』のお腹の中で、灰になって消化されずに腐っていく

【No.470 ゑがおのれんしゅう(いろは式「ゑ」)】
「ゑがおのれんしゅう」と書かれた紙を病室のベッドの下で見つける。彼女いわく、丸まった文字は手が震えて力が入らないそうだ。恥ずかしそうに、ぎこちなく笑っていた。今度、「ゑ」と似た形のかんざしを買ってこようと思う。長い黒髪がなびいていた、あのころのようにはもう似合わないのに

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652