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140字小説 No.-146‐150

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【No.-146 命を紡ぐ】
目覚めたら知らない青年が立っていた。違和感を覚えて指を見ると赤い糸が垂れている。運命の、というやつなんだろう。青年の手が伸びる。心臓が脈打つ。「糸人形が意思を持つなよ。また失敗だ」赤い糸を引き抜かれると指がほつれていって、腕、肩、体が綻んでいく。頭、記憶が、ブツンと──

【No.-147 さんざめく凪】
「浦島太郎を竜宮城に運んだ亀はオスかメスか」絵羽模様の和服を着た妻が、砂浜で仰向けになっていたのは遠い夏の話だ。玉手箱を開けたわけでもないのに、気付けば皺だらけになる位の年月が経っていた。あの日の疑問に答えが出せないまま、誰も助けられないまま。後悔の形に、波がなぞった。

【No.-148 旅立ちの日】
社会人になって数年が経ってもお年玉をもらっていた。祖母いわく「入院している私の代わりに、あなたが旅行して土産話を聞かせてちょうだい」だそうだ。お年玉だけでは旅費が足りないけれど、お給料も足して世界中を飛び回る。だから、僕がそっちに行くときは、今度は天国の話を聞かせてね。

【No.-149 寝正月】
年越しカウントダウンに大勢の人が集まる。「3、2、1――」だけど、いくら待っても新年を迎えることはなかった。年末が繰り返されてから三日後、国中に緊急速報が流れる。「寝正月が目を覚ましたようです!今、この瞬間から1月4日になりますので、急いで平日の準備を始めてください!」

【No.-150 地図にない景色】
会社を辞めた翌日、地図を頼りに知らない街を散歩する。ふと、男性の肩がぶつかり舌打ちされる。嫌なことの連続だ。「落としましたよ」それでも、女性が本を拾ってくれてほほえむ。人生はまだ捨てたものではないのかもしれない。開きかけた地図をポケットに戻し、目的地は決めずに歩き出す。

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652