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140字小説 No.-066‐070

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【No.-066 明滅信号】
誰も見ていなくても、車が通っていなくても、横断歩道は必ず青になってから渡る。この先、新しい何かに挑む機会が私にあったとして、ズルをしたという気持ちに苛まれてしまうからだろう。私が未だに立ち止まっているのは赤信号が変わるのを待っているから。なんて、言い訳にして足踏みした

【No.-067 義務を配る】
旅行土産を買わなかったことに上司が憤っていた。用意しないと非常識扱いの煩わしい文化である。渡したら渡したで品物の良し悪しを語り出す。価値観の、果ては人生の値踏みをされているようで腹が立つ。すぐ出せるように忍ばせていた辞表をデスクに添える。私から仕事場への置き土産だった

【No.-068 正義感の塊】
行き過ぎた正義感は泥だんご作りと似ている。誰も気に留めない小さな綻びを、手を汚してまで大きな塊にしていく。水を撒いて、砂を足して、石を混ぜて、不純物を纏ったまま膨れ上がっていった。いつからだろう。砂遊びを汚いと思うようになったのは。泥だらけの手をなぜか洗い流せずにいた。

【No.-069 アイデンデータ】
USBを胸に挿し込む。日記を綴っていれば、昔の自分に姿も記憶も戻っていく。写真を保存していれば、当時の雰囲気が再現される。自己確立が容易になった代わりに、誰かのデータを使えば、誰かになりすますことができてしまう。個性があやふやになっていく。USBは個人情報そのものだった。

【No.-070 恋と稲妻】
彼女の涙には電撃が宿っている。だから、人を傷付けないように彼女はひとりぼっちだった。ある夜、大停電に見舞われた街は混乱に陥る。展望台に立つ彼女が何回も、何度も、何粒も涙を流せば、街は色が溢れるように明かりを灯す。泣きじゃくったあと、彼女がはにかむ。僕の心に稲妻が走った。

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652