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140字小説 No.-246‐250

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【No.-246 青と夏】
バス停で雨宿りしながら俯く。昔は泣き虫なので『雨女ちゃん』と馬鹿にされていた。そのせいか天気の悪い日は憂鬱になる。でも泣いたあとの笑顔はとびきり素敵だって、幼なじみの男の子が慰めてくれたっけ。「あ」バスから彼が降りてきた。「お」雨が止む。私の心と空に、大きな虹が架かる。

【No.-247 命浮かぶ】
私が落ち込んでいると祖母はシャボン玉を吹いてくれた。ストローから生まれた泡がぬいぐるみ達に弾けて、楽しそうに部屋を動き回る。今にして思えば、あれは祖母の命をおもちゃに込めていたのかもしれない。悲しむ母を余所に私は無邪気だった。歳以上に老いている、祖母の優しさも知らずに。

No.-248 熱を生む
呼吸がどれほど難しいことか、焦燥を堰くように海岸を走り出して気付く。私の幸せも、将来の夢も、喧嘩したあの子との関係も、今はまだ凪いでいるだけだ。陸風から海風へと変わる合間に佇む。息を吸って、澱を吐いて。水平線の向こうには必ず道があると願う。途切れても、風はまた吹くはず。

【No.-249 ふれる】
カラカラ軋む音に俯いた顔を上げると、老夫婦の押すベビーカーには赤ちゃんの人形が座っていた。一瞬、気色悪いと思った自分を呪う。偽物の光だからこそ、救われる人はきっといるはず。「どうか、抱っこしてあげてください」人形の体にふれる。僕の左手も作り物だけど、この温もりは確かだ。

【No.-250 静かな寄る辺】
深夜二時のファミレスはどこか寂しい。小説家になるのが夢で、時代に合わず筆と原稿用紙で物語を書いていた。有名になれば何者かになれると信じて。ふと、辺りを見回す。遅くまで働く店員さんも、長距離ドライバーも、誰かを救う何者かだ。昏い光かもしれない。だけど僕の小説も、きっと――

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652