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140字小説 No.≠056‐060

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【No.≠056 灰の記憶】
車に轢かれて彼は亡くなったらしい。私は事故のショックで、彼に関する記憶をあまりよく覚えていなかった。お墓の前で遺灰が詰まったペンダントを取り出す。口に含むとなぜかそのときだけ、彼の記憶を思い出すことができた。私を見上げる彼の姿と、私を責め立てる親族の姿が頭を駆け巡った

【No.≠057 言葉戦争】
言葉達が喧嘩をしていました。ひらがな軍は「『め』と『ぬ』の方がややこしい」と言い、カタカナ軍は「『シ』と『ツ』の方が書きにくい」と張り合いました。漢字軍は「『猫』と『描』の方が見分け辛い」英語軍は「『b』と『d』の方が面倒くさい」と声を上げます。今日の勝負、引き分け

【No.≠058 鈍色に染まる】
ふと、書き殴られた絵が目に入る。何枚も、何枚も。未完成の油絵だ。飼い猫がウイスキーの入ったグラスを倒して液体が零れる。元からそういう色だったのか、煙草の灰で汚れてしまったのか、正しい色を思い出せずにいた。『画家になりたい』という夢が、絨毯の中にくすんだ色で染まっていく

【No.≠059 似顔】
彼女から別れ話を切り出された。おとなしい子なのか昔は感情表現が下手だったけど、今では僕と一緒にいるだけで笑顔が溢れていたのに。何かの間違いだろうと思って、別れたい理由を聞いてみる。彼女が小さくほほえむ。「あなたと付き合っていたらね、私、作り笑いが上手になっちゃったんだ」

【No.≠060 新任教育】
新任教師として中学一年生のクラスを担当する。騒ぎばかり起こす生徒達に僕は辟易していた。卒業式の日、委員長が別れの言葉を告げる。「これで『問題児ばかりのクラスをどうまとめるか』の実習は終わりです。また来年度からもがんばってください」それがこの学校の新任教育システムだった

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652