140字小説 No.821‐825
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【No.821 終活のススメ】
年老いた私に、息子は分冊百科『終活のススメ』を送ってきた。最初は腹が立ったけど、付録のエンディングノートや葬儀会社の手配書は見てるだけで楽しい。終わる準備が整う。いつでも死ねると思えば、まぁ、すぐに死ぬ必要もないのだろう。退屈な人生は続くけど、今日もご飯はおいしかった。
【No.822 テセウスの心臓】
視力が弱くなってきたら違う眼を用意して、叶いそうにない夢なら平均的な未来に入れ替える。今では全ての物事に代替品がある世の中だ。古くならないよう、傷付かないよう。心臓を新しくする度、何者かになれた気がするのに。古い部品を置き換える度、自分が自分ではなくなっていく気がした。
【No.823 しゅくえん】
「縁結びの神社に行くような関係ならさ、そもそも勝手に結ばれるんじゃないのかな」確かにそうかもしれない。この日を境に彼女との距離は変わるのだろう。胸が高鳴る。僕達の行く末を、呪う。そもそも縁切り神社に二人で行くような関係ならば、神に頼らなくても最低な日が待っているはずだ。
【No.824 無形文化遊具】
親父には駄洒落を現実にする力がある。いつもは発言に気をつけているけど、寝ぼけながら「太陽にぶつかって痛いよう」と呟く。瞬間、太陽が近付いて体中に痛むような熱が生まれた。慌てて起きた親父が叫ぶ。「そ、そんなシャレはやめなシャレ!」接近は止まり、親父の不思議な力は失われた。
【No.825 遺婚】
『結婚は人生の墓場』なんて言うけれど、確かにその通りかもしれない。市役所では犬を連れた女性が婚姻届を出していた。同性はもちろん、今では動物、二次元、機械とも籍を入れられる。かくいう僕も亡くなった恋人と結婚するために順番を待つ。そうだ、披露宴は彼女の墓場でやってみようか。
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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652