140字小説 No.931‐935
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【No.931 モラルシンパ】
類は友を呼ぶと言うように、仲良しグループの私達は好きな漫画も、好きなドラマも、好きな化粧品も同じだった。いや、わざと似せてきたのだろう。一緒ならみんな笑ってくれる。あの子から仲間外れにされなくて済む。動画で踊るのも、変なポーズで写真を撮るのも、本当は私、大嫌いなんだよ。
【No.932 生命賛歌】
「森でクジラの化石が見つかったとするね」波打ち際で彼女が話す。「ある人は『大昔は海だったんだな』と思うし、ある人は『地上で生きるクジラがいたのか』と思うし。要は捉え方次第なのよ」「どういう意味?」「私が人魚で、あなたが人間なのは些末な話ってこと」彼女の美しい鰭が揺れた。
【No.933 オリフィスの祈り】
眠りに就く前、枕元の砂時計をひっくり返して眺める。どんなに朝が不安でも、どれだけ夜が穏やかでも、この五分間が終われば全て無に還る気がして。自分で流した砂の末路に息をのむ。逆さにしても時が巻き戻るわけじゃないのに。何か始まる予感を求めて、また、砂時計に手を伸ばしてしまう。
【No.934 浅瀬に仇波】
彼女が砂に文字を書く。「言葉は波なんだって」だから、表記揺れが起こる。意味は移り変わる。「些細でも心がさざめくし、穏やかな気持ちにもなるの」波が砂の文字に隠した願いを攫う。「私ね、あなたのこと本当は――」海になれたら心の揺れも、彼女が笑ったその意味も気付けたのだろうか。
【No.935 金の皿 銀の皿】
回転寿司の皿を盗んでお会計をごまかす。河川敷に皿を捨てると、水の中から怒り心頭の店員が出てきた。「あなたが落としたのは金の皿ですか?銀の皿ですか?」「い、いや、普通の皿、です…」「正直者のあなたには金と銀の皿を沢山あげましょう」お会計がとんでもない金額になってしまった。
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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652