見出し画像

140字小説 No.441-445

タイトルからツイッターで載せた作品に飛ぶことができます。
お気に入りの作品にいいね、RT、感想などしてもらえると幸いです。

【No.441 感覚物体(いろは式「か」)】
体の大きさが三倍のサバが泳ぐ。それに感銘を受けたカメが涙を流して、関西まで勝手にカサが飛んでいく。未知の生命体「感覚物体『ンイ』」が入り込むと、その物の行動や性質を変えてしまう。こいつを使って金儲けをしよう。その瞬間『ンイ』が僕の頭に入り込んで、体を人外に変えてしまった

【No.442 よふかしのうた(いろは式「よ」)】
予習のために参考書とにらめっこする。ふと息抜きに昔はやっていたSNSを開く。赤文字で『新着コメントが1件あります』と表示されていた。昔はあんなに喜んでいたのに。大切になれなかった子の、最後の繋がりだった。赤文字をチェックシートで隠す。あの子の言葉も、思い出も、見えなくなった

【No.443 タイムタッパー(いろは式「た」)】
タッパーに思い出を詰め込む。冷蔵庫の中を整理するついでに別のタッパーを取り出した。クリスマスの記憶。初デートの期待。何を保存したのか思い出せなくてフタを開けると、原型を留めないほどに腐っていた。廃れて、錆びて、朽ちて。ラベルを確認すると掠れた文字で「夢」と書かれていた

【No.444 レゾンメートル(いろは式「れ」)】
レーズンパンのレーズンだけを、くり抜いて食べる子だと知ってからは別れが早かった。一緒に食べてこそ酸味と甘みが際立つのに、これじゃ存在意義を失ってしまう。くり抜かれたのが僕なのか、はたまた彼女自身だったのか。いびつに穴の空いたパンが、まるで僕らの空白を表しているようだった

【No.445 その訳を(いろは式「そ」)】
騒音で目が覚める。なかなか起きない僕に痺れを切らして、彼女が不機嫌になりながら僕の頭を掃除機で小突く。「この家に住むのも今日で最後でしょ」と笑って音楽をかけた。スピーカーからは『思い描くことさえ 僕らは忘れたよ』と流れる。嘘のように、別れにしてはおだやか過ぎる午後だった

この記事は有料ですが全編公開になっています。私の活動を応援してくださる方がいましたら投げ銭してくれると嬉しいです。また、サポートやスキのチェック。コメント、フォローをしてくださると喜びます。創作関係のお仕事も募集していますので、どうか、よろしくお願いします。

ここから先は

0字

¥ 100

改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652