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秋田柴子
2021年10月29日 19:53
――このままじゃ間に合わない。 暗い寝室のベッドの中で、謙介は焦りを募らせていた。 応募する予定の文学賞の締切が一か月後に迫っているというのに、原稿はおろか物語の欠片すら浮かばないのだ。コンピュータの画面を前に、ただ空しく時間が過ぎる毎日が続いていた。 俺、才能ないのかな……。 謙介はため息をつくと、億劫に寝返りをうった。何だか窓から差し込む月明かりがいやに明るい。寝たままちらりとカー
2021年10月1日 17:56
「よう、味噌煮込み。待てよ」 うどん大学新入生の味噌煮込みは、学食でいきなり後ろから声をかけられてびくりと立ち止まった。恐る恐る振り返ると、そこには四年の讃岐と三年の伊勢がにやにや笑いながら立っていた。 ――まずい。 そう思ったが足が動かない。立ち尽くす味噌煮込みの行く手を阻むように、二人はずいっと一歩詰め寄った。「おまえ、うどんで味噌ってマジ訳わかんねー」 讃岐が乱暴に味噌煮込みの肩
2021年10月27日 19:49
「じゃあ、みんな元気で夏休みを過ごして下さい。遊び過ぎて宿題を忘れないようにね」 先生の声に、クラス中が歓声で応えた。 いよいよ明日から夏休みだ。 みんな両手いっぱいの荷物で、わっと一斉に教室を飛び出した。「なあ。夏休みの自由研究、何やる?」「オレ、父ちゃんと飛行機の模型作るんだ!ほんとに飛ぶやつさ。オレの父ちゃん、めっちゃ器用なんだぜ」「僕んちは夏休みにヨーロッパ行くから、外国の言