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デザイン思考ってなんのこと?

今日は日曜日。最近、まいにち日曜日みたいな雰囲気のプノンペンだが、じっとして、耳をすましているとだんだんいろんな音が聞こえてくる。隣人がキッチンの戸棚を開け閉めしたり、口論してる音。近く遠くで聞こえるクラクションや工事現場であろう、金属がぶつかる音や、モーターがウィーンと唸る音、重なって聞こえる自動車やバイクやオートリキシャ(ここ2−3年でインド式のやつがバーっと普及して、昔ながらのトゥクトゥクは影が薄い)のエンジンの音。時折、どこかのラウドスピーカーから歌声も聞こえてくる。

そして、全部の上に覆いかぶさるかのように、風が吹いている。かなり強い。昨晩は今年2回目くらいに、がっつりと雨が降った。そのせいか、4月(ここでは、一年で一番暑い月だ)にしたらちょっと涼しいような気もする。もう、雨季が近づいてきてるのかもしれない。

着々と、粛々と、「お前らなんか関係ないよー」と言わぬが如しに、季節は移り変わって行く。

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ここで文章を書くときは、なるべく観念的な話を離れて、具体的かつ身体的な観点を大切にしたいと思っているのだけれど、それはそれとして、ここらで僕の仕事、生活の上でのテーマになっているデザイン思考というものを大まかにちょっと説明しようかと思う。

最近巷でも「デザイン・シンキング」とか、「ヒューマン・センタード・デザイン」とか聞かれるようになったような気もしていて、これを読むような人の中には一定数、聞いたことがある人もいるかもしれない。まあ別に大した理念とか理論ではないので、知ってたら飛ばしてもらってもいいんだけど、ここでは僕の切り口とか、どうして大事だと思うのか、とか、どうやって使うのか、みたいな部分にも言及して行きたいので、よかったらお付き合いください。

デザインとは

よく言われるように、デザインという概念は物の形とか色、スタイルとか、見かけ、見せ方本位で捉えられがちではあるのだけど、本来は機能、趣旨、意味のほうが大事で、「計画」と言った方が近いような場面も結構ある。僕らの周りにあるものは人の手が入っているものはすべからく「デザインされた」ものなんだけど、そこにデザインされているのは物だけじゃなくて用途、用法、そしてそれを使う生活そのものに対する意志なんだ。「デザインする」ということはその意思を決定して、表現させていく、ということで。

別の言い方をすると:

デザインとはこの先にあり得る、または実現したい未来を予想し、それに向き合うことを可能にするためのアプローチを考える作業。変化を可能にするためのステップを考え、形にすること。

この広義でわけのわからない(笑)プロセスを、わかりやすく説明して誰でも使えるようにしたのがデザイン思考と呼ばれる方法論で、60年代くらいに考案されたんだけど、80年代から2000年代にかけてビジネスに使えるってことで一気に広まった(この件で有名なIDEOの創設は1991年)。

具体的に例を挙げると、例えばヤカンのデザイン。ヤカンがなかった時代に、どういうニーズがあって、どうやってデザインされたのだろう。このプロセスには複雑な要素が絡み合って内包されている *1のだけど、「水を温めて、ある程度保温しながら持ち運びを可能にする」という未来を可能にして、形にするということで、いたって自然な、常識的なプロセスである、とも言える。

ヤカンって昔からあんまり形は変わらないように見えるけど、それには必然があって、「お湯を沸かす」という生活の上での行為、必要性そのものが(複雑ではあっても)あまり変わっていないから。でも「火」を使わない家が増えたり、キッチンがないオフィスでお湯を沸かすということが増えてくると、電気湯沸かし器という、新しいものが台頭してくる。(これは日本の電気ポットと、そのほかの国で主流のエレクトリックケトルとで完全に分岐進化していて、対比させると色々おもしろいかもしれない)

ちょっと強引にまとめると、今までとは違う未来が出てくる場所で、その未来を想像し、それを可能にしたり、新しい環境に対応するために、デザインは活躍する。その「やり方」を体系化して、簡単に誰でもできるようにしたのがデザイン思考である、と。

ここで言っておくと、「簡単に誰でもできる」からこのやり方で誰でもいいデザインができる、というのは詭弁で、当然そこには訓練とか、経験とか、スキルというものは介在する。この辺の理解は人それぞれなので、デザイン業界にはデザイン思考というコンセプトを敵視する人も少なくない。

僕の立場としては、現在いろんな形で「未来」への変化が差し迫っている中、デザイン的なアプローチ(デザイン思考)は専門家であろうとなかろうと一番必要とされるスキルだろうと思っています。今、普通に皆が身につけないといけないと言われる、算数とか物書きとかそういう基礎技術と並べて全然いい。そして、そういう技術と一緒で、死ぬまでずっと毎日鍛えていかないといけないスキルであるとも思っています。

長くなってしまった。来週は具体的にどういうステップを踏んで、どんなスキルが必要かという部分に迫ります!



*1 この部分の詳しいところはクリストファー・アレグザンダー『形の合成に関するノート』に詳しいです。

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日本に生まれるも17歳から出たっきりの海外生活者。東南アジアを中心にファシリテーター、コンサルタントとして企業、団体の研修、研究開発のお手伝いをしたり、ワークショップを企画運営したり。社会変革にクリエイティブ力が必要不可欠と考えていて、そのためのより広い啓蒙活動?にシフト中。

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