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小規模企業の財務経理・経営企画をいかに構築すべきか

50名くらいまでの組織を対象に要点を整理してみました。

日本企業の場合、経営企画は戦略の立案と実行を担っていることが多いことから、財務経理とは別物と位置付ける組織が多いと思います。筆者は、数字に基づく経営という観点から、1つの部署で対応するとスッキリすると考えており、その前提で記載しています。


財務経理・経営企画業務の概観

経理・財務・経営企画の業務分担は会社によってかなり異なります。以下の分類は外資系寄りです。日本企業の場合、債権債務の管理は経理が、予実管理は財務が担当しているかもしれません。

筆者作成

意思決定との関連を示したのが下図です。経理実績を把握し、財務が資金調達、経営企画が資金運用(事業の推進)に関する予測・判断・実行を担います。経営企画はPDCAの推進役になるイメージです。

筆者作成

以上の機能を人・組織ITツール社内ルールの3つが支えます。

適正人数は?

50名程度までの組織では、財務経理・経営企画に割ける人数は合わせて3名前後ではないかと思います。仮に3名とすると、経理・財務が2名、経営企画が1名、いずれも専任とするか、3人とも経理・財務を主担当としつつ、リーダーとなる方が経営企画を兼務するのがよいと思います。

ただし、次に掲げるような課題の重要性が高く、事業が成長しているような状況では、増員や外注を考慮する価値があると思います。

典型的な課題3選

月次決算の早期化・正確性の向上

「経理はキャッシュフローを生まないから、人数と機能は最小限にしたい」という経営者の声を聞くことがあります。ただ、会計データによって実績を金額ベースで把握できないと、事業改善や資金調達のための質の高い予測情報が作れません。

業種にもよりますが、早期化の目標は10営業日(暦日で2週間程度)が1つの目安だと思います。これ以上かかってしまうと、3〜4週間以上前の数字を振り返ることなり、その間にアクションが起こせないことによる機会損失が大きくなってしまいます。

早期化の手法については以下の記事によくまとまっています。経理内でできることには限界があるため、他部署の協力を得ることが早期化の鍵だと思います。

次に正確性について。早期化とトレードオフの関係になる部分もありますが、ある程度のレベルまでは、人員を増やさずに早期化の同時追求が可能だと考えています。ポイントの1つは、月間を通しての作業量の平準化です。月が明けてから月次締めまでは作業が集中し、疲れによるミスが増えます。そこで、月初の作業をできるだけ前月中に前倒しで行い、疲労を軽減することともに、ダブルチェックの時間が増やせれば申し分ありません。

計画達成・業績改善のための管理指標のモニタリング

小規模の会社の場合、圧倒的な知識と経験をもつ経営者が実質的に1人で組織を牽引していることがあります。経営者には見えている現状や打ち手が社員に共有されていない場合、事業上の機会損失となるだけでなく、経営者・社員間の不信の原因にもなります。

そこで誰かが、経営者の頭の中でしっかり整理されている戦略やビジネスモデルを数字や言語の形で「見える化」する必要があります。それを受け、営業や開発の現場では、打ち手の結果を数字でモニターできるよう管理指標(いわゆるKPI)として設定します。意図した通りに成果が出なかったときには、現状を修正して次の打ち手へとつなげます。経営企画の大きな役割の1つは、このサイクルの推進役となることです。

この辺りの考え方がこの本に非常によくまとまっています。

内部統制の整備

小規模な会社の場合、内部統制の主眼は現預金・在庫をはじめとする資産の保全、各種財務報告の信頼性確保、法令遵守の3点になると思います。経営者は肌感覚で主要なリスクを理解していますが、社員に共有できていないか、共有できていてもアクションに移せていない場合が多いと思います。リスクに目配せして、先手を打っていく人間が必要です。

内製・外注はどう判断するか?

内製(自社で業務を行うこと)のメリットの1つは継続的な改善がしやすいことです。月次決算の早期化はその最たるもので、毎月の業務の地道な振り返りとフォローアップは、社内で取り組んでこそ推進力が生まれます。

他方、税務申告のような季節的かつ専門的な業務は、対応できる人材をフルタイムで抱えるほどの業務量がなければ、外注を検討する余地があります。M&Aのような特殊性の高い「プロジェクト」ものもこの範疇に入ります。

結び

人員や予算が限られている場合、既存メンバーが本当に必要な業務だけに集中し、効率的に業務に当たらなければなりません。そのためには、どの業務の優先度を「高」にするかという問題ももちろん大切ですが、実は、チーム内外の人間関係を円滑に保つことの方が個人的には重要だと思っています。これについては別稿にて考えを述べたいと思います。

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