50名程度の会社で財務経理・経営企画をいかに構築すべきか
Lynx Global Partners(リンクス・グローバル・パートナーズ)はカナダ・トロントを拠点とし、スタートアップや中小企業向けにFP&A業務・M&A支援業務・財務経理機能構築業務を提供しています。日本のお客様には時差リモートで対応しています。
さて掲題の件、日本企業の場合、経営企画は戦略立案・実行を担っていることが多いことから、財務経理とは別物と位置付ける組織が多いと思います。筆者は、数字に基づく経営という観点から、1つの部署で対応するとスッキリすると考えており、その前提で記載しています。
財務経理・経営企画業務の概観
経理・財務・経営企画の業務分担は会社によってかなり異なります。以下の分類は外資系寄りです。日本企業の場合、債権債務の管理は経理が、予実管理は財務が担当しているかもしれません。
意思決定との関連を示したのが下図です。経理が実績を把握する一方で、財務が資金調達、経営企画が資産運用(事業の推進)に関して、予測・判断・実行を担います。
以上の機能を人・組織、ITツール、社内ルールの3つが支えます。
適正人数は?
50名程度までの組織では、財務経理・経営企画に割ける人数は合わせて3名前後ではないかと思います。仮に3名とすると、経理・財務が2名、経営企画が1名、いずれも専任とするか、3人とも経理・財務を主担当としつつ、リーダーとなる方が経営企画を兼務するのがよいと思います。
ただし、次に掲げるような課題の重要性が高く、事業が成長しているような状況では、増員や外注を考慮する価値があると思います。
典型的な課題3選
月次決算の早期化・正確性の向上
「経理はキャッシュフローを生まないから、人数と機能は最小限にしたい」という経営者の声を聞くことがあります。ただ、会計データによって実績を金額ベースで把握できないと、事業改善や資金調達のための質の高い予測情報が作れません。
業種にもよりますが、早期化の目標は10営業日(暦日で2週間程度)が1つの目安だと思います。これ以上かかってしまうと、3〜4週間以上前の数字を振り返ることなり、その間にアクションが起こせないことによる機会損失が大きくなってしまいます。もちろん、売上や費用に関する速報値に基づいてPDCAが回せている場合は、この限りではありません。
次に正確性について。早期化とのトレードオフになる部分もありますが、正確性と早期化の同時追求が困難になるのはかなりのレベルに達した後であると思います。月中の作業量の平準化、例外処理や不必要な業務の削減、それらを可能にする業務や月間スケジュールの文書化(見える化)など、多くの施策が正確性と早期化の両方に効きます。
ほとんどの中小企業に当てはまることとして、かつかつの人数で経理を回している現状から、早期化や正確性の向上のために経理メンバーの士気を上げていくのは簡単ではないと思います。なぜやるのか、どのようなメリットがあるのかを経理メンバーに納得してもらえるよう、しっかり説明するのがリーダーや経営陣の役目になると思います。
計画達成・業績改善のためのモニタリング
せっかく予算や事業計画を作成したのに、実績との差額に基づいて次の打ち手を合意する会議体がなかったり、週次の営業会議などで打ち手は決めたのに、その成否やその理由を誰もフォローしていなかったりします。
打ち手が意図した通りの成果を生まなかったとき、その要因を推測し、次の打ち手へつなげる。このサイクルを回せる推進役がいれば心強いでしょう。部門間の調整を伴うことも多く、真面目に実行すればかなり時間がかかる仕事です。経営企画と銘打った機能を置く理由の1つはここにあります。
また、小規模の会社の場合、圧倒的な知識と経験をもつ経営者が1人で組織を牽引し、経営者だけが現状や打ち手を網羅的に把握しているということがあります。経営者の構想が社員に共有されていない場合、事業上の機会損失となるだけでなく、経営者・社員間の不信の原因にもなります。こうした経営者と社員との橋渡しも経営企画の重要な役割の1つです。
内部統制の整備
小規模な会社の場合、内部統制の主眼は現預金・在庫をはじめとする資産の保全、各種財務報告の信頼性確保、法令遵守の3点になると思います。経営者は肌感覚で主要なリスクを理解していますが、社員に共有できていないか、共有できていてもアクションに移せていない場合が多いと思います。リスクに目配せして、先手を打っていく人間が必要です。
内製・外注はどう判断するか?
内製(自社で業務を行うこと)のメリットの1つは継続的な改善がしやすいことです。月次決算の早期化はその最たるもので、毎月の業務の地道な振り返りとフォローアップは、社内で取り組んでこそ推進力が生まれます。
他方、税務申告のような季節的かつ専門的な業務は、対応できる人材をフルタイムで抱えるほどの業務量がなければ、外注を検討する余地があります。M&Aのような特殊性の高い「プロジェクト」ものもこの範疇に入ります。
結び
人員や予算が限られている場合、既存メンバーが本当に必要な業務だけに集中し、効率的に業務に当たらなければなりません。そのためには、どの業務の優先度を「高」にするかという問題ももちろん大切ですが、実は、チーム内外の人間関係を円滑に保つことの方が個人的には重要だと思っています。これについては別稿にて考えを述べたいと思います。
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