息の湿り


見知らぬ恐怖
ふり向けば何時のまにか
首筋で啜り泣く怯え

背筋に歯を立てる不安が
私の腕を痺れさせては
迂回しつづける声が
月のした 私を孤児みなしご

手を延べて
宙でくうを摑む
何度も
何度も
握りしめては月の光が
砂となってワンルームの
フローリングの隙間に消えていく

私の声は
ながく 私のものでなかった
喉から溢れ出た よそものの
ガラクタばかり増えていく部屋で
今夜こそは
月影を淡く淡くはね返す
私の息だけを頼りに

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