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マミーフェリーメモリーズ

ミイラを見た夜
怖すぎて、眠れなかったです

我が家は、父親が出張がちで
年末年始とGW
あと盆休みくらいしか家にいなかったのでした

なので、父親のいる連休には
家族で旅に出るわけですが

前もって予定を立てるような
計画性のある家ではなく
出たとこ勝負な旅ばかりでした

予約がいっぱいで
旅館に泊まれない時のために
車の後部座席に布団をひいて
夜通し車を走らせるのが我が家流で

ある年のGW、当日

母親が、青森でも行こうか
と言い出しました

これはいつものセリフでして
我が家流で行けるところと言えば
茨城の大洗
新潟の直江津
福井の敦賀
あとは青森か八戸しかないのです

母の発言に連動して
父がフェリーターミナルに電話をします

不思議なことに
GWなのに予約が取れてしまうので

今思えば、計画しない意味が
分からんでもないのでした

さぁ、予約が取れたら
夜の出港に間に合うように
家族総出で旅の準備のスタートです

いつもギリギリなので
船の寝床は、2等船室
いわゆる雑魚寝です
稀にB寝台が空いていれば
ラッキー、といったところでした

何度も船旅を経験しましたが
あの頃のフェリーの船内は
決して、キレイとは言えるものではありません

品がなく汚らしいのです

出航すると
トラックの運ちゃんの酒盛りと
タバコの匂いと草履をする音
船が揺れるせいか
トイレは小便器の周りに尿が飛び散り
中にはゲロまで置き去りにされてます

室蘭-青森間
苫小牧-八戸間なら
夜乗船して、翌朝下船で済みますが

小樽-直江津
小樽-敦賀だと、丸一日半船の中なので
快便のくせに神経質な俺は
ウンコを我慢しなければならなかったのです

今のようにコンビニが
至る所にあるわけでもなく
一か八かの、非常に危険なカケでした

そんなギリギリな環境が
俺をいつしかウンコ使いに成長させました
ウンコ使いとは、ウンコの出し入れを
不快に思うことなく、自在に操れる者のことです

山ちゃんはウンコ使いですから

生まれてこの方、ウンコで他人様に
迷惑をかけたことがない
これだけが、自慢できることなのです

東日本フェリーって、まだあんのかな
室蘭-青森間が、昨年復活しました(嬉)


話を戻して

船旅の良いところは
大陸の夜明け1番に
フェリーから降りる時の高揚感です

ガタンゴトンと、車がタラップを渡る時
フロントガラスを機械的に
上下する港の景色が
さも別の国に来たような
気持ちにさせてくれました

あの年は、ちょうど満開の桜の時期で
青森県弘前市に向かっていました

あの年とは、俺が小学校低学年

よくそんなこと覚えているな
と思うかもしれませんが
忘れるわけがないのです

なにせ、生まれてはじめて
ミイラを見た時だからです

どこかの寺の中の拝観コースの
途中にあったような覚えがありまして

ガラスケースの中で
綿か何かの上で小さく丸まった黒い物体
よく見ると、目があって鼻の穴がある
蛍光灯で照らしているものだから
見れば見るほど鮮明になってゆくのです

目を逸らせばいいものを
恐怖よりも興味が競り勝ち
マジマジと観察してしまうなんて
人間の心理とは不可思議なものです

その夜、泊まった旅館に
あのミイラが出てくるんじゃないかと
一睡もできずに朝を迎えました

翌朝

さ、まんまけ

大広間で朝ごはんを待っていたら
おばちゃんが味噌汁をお膳の上に置き
山ちゃんに笑顔で話しかけてきました

このおばちゃん
同じ日本人だと思ってたけど
外国人だった、と驚いてしまい
俺はきっと変な顔していたのでしょう

父親が、朝飯食べろって意味だ、と
笑いながら教えてくれたのを

思い出したのでした

朝から記憶をたどって
ミイラをネットで調べてみたんですが
該当するものがないのです

何だかキツネに摘まれた気分です

ま、まさか
作話?なのでしょうか
あの記憶は、どこへ

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