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『子鬼のつぶやき』

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「クラブBA」会員、にぎた/BAがお届けする短編ミステリー小説。中学3年生の主人公、半田圭司が進める”推理”の行方は—
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#子ども

『子鬼のつぶやき』 第十一話

(→第十話)

アパートに着くと、順子はいつも通りパートに出掛けていった。

 今日は祖母の家ではなく、サニーハイムに帰って来たのだが、家の中が少しおかしい。浦島太郎ではないけれど、母も少し窶れた顔をしていて、居間にはゴミが散らかっていたりした。

 今回のは、きっと大戦だったのだろう。

 圭司は、そんな戦の傷痕を引きずる母を見送ると、「いなくて良かった」と一言こぼしてから、自室に向かった。

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『子鬼のつぶやき』 第十話

(→第九話)

「ひとつ思ったんだけどさ」

 まだ鼻声であったけれど、しょうちゃんは元気に部活へ来ていた。

 朝、顔を見るなりこちらへ駆け寄ってくれた友人は、まずは昨日の欠席を律儀に謝った後、自身の調査について述べた。

 結果は白紙。喜ばしいことだけど、クラスメイトたちが事件や事故に巻き込まれたことはなかった。

 圭司も告げた。家族には変わりはない。引っ越した先のサニーハイムにも、何も手が

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