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「生きる意義」と「生きる意味」

精神科医の泉谷閑示さんの著書「仕事なんか生きがいにするな」は、人間らしい生き方を考える、新たな視点を与えてくれます。私たちは、日頃、頭で損得勘定を考え、生きる意義(価値)を大切にしている一方、心による感覚や感情の喜びによって捉えられる生きる意味をないがしろにしているのではないか。そして、そうした生きる意味を感じるためは、何でもないように見える「日常」こそが、重要な鍵を握るといっています。

現代人は、「いつでも有意義に過ごすべきだ」と思い込む一種の有意義病にかかっているという指摘、そして、あえて頭で考えずに無計画、無目的に自分の行動を即興にゆだね、面倒くさいことをむしろ積極的に歓迎してみることの大切さを説いています。

いつか来る将来のために、勤勉に働き、せっせと貯金に励み、様々な保険に入る一方、「今を生きる」ことをないがしろにしてまで、そうした将来に備えることに対して、鋭い警鐘を鳴らしています。

アウシュビッツの門に掲げられた標語「ARBEIT MACHT FREI(働けば自由になる)」や、イソップ童話の「アリとキリギリス」におけるアリの過度な倹約を戒めています。

ここで今一度、あのアウシュビッツの門に掲げられていた標語「働けば自由になる」がいかに虚偽に満ちたものであったかを思い起こしましょう。さらにアリの哲学がいかに吝嗇(りんしょく=度が過ぎた倹約)で、美に生きるキリギリスを愚弄する卑しい心性によるものかを考えると、私たちはもう二度と、そのようなドグマに騙されて、貴重な「人間らしい生」を犠牲にしてはならないと思うのです。

「仕事なんか生きがいにするな」 泉谷閑示

生きる意味をもう一度しっかり考えたい方にお勧めの一冊です。


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