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今年つくった新しい授業とワークショップ(2022)

2022年の「デザイン教育」

1年空いてしまいましたが、2022年版です。全く新しく「つくった」授業はないのですが、いくつかの授業をアップデートしたり再開したり、受講対象者に合わせてアレンジしたりしました。これまでの記事はこちら↓

デザイン・マネジメント(香川大学ビジネススクール)

2022年度は対面で行うことができました(前年度は直前にオンラインに変更)。集中講義1日で内容は「サービスデザイン」についての概論と演習です。(2022年1月8日)( 香川大学ビジネススクール 香川大学大学院地域マネジメント研究科にて)

香川大学キャンパス

サービスデザイン概論の講義のあと、演習では、ステークホルダーマッピングをもとに新規ビジネスの創出についてグループで議論しました。まず自社(自組織)の既存のビジネスについてステークホルダーマップを作成した上で他社と比較して特徴や強みを把握し、さらに、新たなステークホルダー巻き込むことによる新しいビジネスの可能性について議論しました。地域特有のビジネス環境を背景にした新規ビジネスのアイデアも出て興味深いワークとなりました。

演習の課題(講義スライドより)

青山アクション・ラーニング MPP(青山ビジネススクール)

青学でのサービスデザインの授業も3年目になりました。2012年度と2022年度は、テーマスポンサーとして株式会社ディー・エヌ・エー様にご協力いただきプロジェクトを実施しました。授業は前期15週(2022年4月〜7月)「マーケティング・プランニング・プロジェクト サービスデザイン」です。(担当:黒岩健一郎教授・吉橋(非常勤講師))

今年度の授業の様子をDeNA Designのブログでご紹介いただきましたので課題など詳しくはこちらをご覧ください。

認知科学とデザインーUIUXデザインのための基礎理論(Designship Do weekend)

Designship Doで新しく始めた短期講座 Designship Do weekend にて、「認知科学とデザインーUIUXデザインのための基礎理論」の講義を担当しました(2022年6月25日)。
前職の美大で学部生向けに行っていた「認知科学」の専門講義を社会人向けにアレンジしてワークを含めた4時間のオンライン講義に再構成しました。
入門講座としての位置づけで、実務でのデザイン経験のあるみなさんにとって認知の理論が身近になるよう、また学んだことを業務で応用できるように授業を設計しました。
Designship Doの本講座では全体監修としての打ち合わせや裏方のスタッフ業務がほとんどですが、久しぶりにデザイナーのみなさんと議論ができて楽しかったです。

デザイン・シンキング(青山ビジネススクール)

2020年度から新設された講義科目です(2022年9月〜2023年1月)。日本のビジネススクールにも「デザイン思考」の授業が並ぶ時代になりました。これまでの「サービスデザイン」の授業の経験から、ロジカルシンキングの頭のままで手法だけ学んでもクリエイティブになりにくいことがわかったので、デザイン思考のプロセスを始める前にマインドセットを変えるための表現ワークを多めに導入しました。写真は第5回に行ったマインドセット修得のための課題「色による表現」のひとこまです。色紙を使って春夏秋冬いずれかを表す色のセットを選んだり、テーマに沿って平面構成(色面による表現)の課題に取り組みました。
デザイン思考の課題ではプロセスに沿って学内の問題解決に取り組んでおり、年明けに最終プレゼンです。

デザイン・シンキング(授業説明のスライドより)
第5回「色による表現」より 色紙を使って平面構成する課題

4年研究室配属 デザイン思考による問題解決(聖マリアンナ医科大学)

3年ぶりの開講となりました(2022年10,11月 集中講座)。3年前にお声がけいただいて実施したのち諸事情で中断していましたが、今年度は対面で実施することができました。

聖マリアンナ医科大学(本館、この奥に教育棟)

前回(2019年度)は、デザインによる問題解決として、病院の外来受付を観察して問題を見つけ、来院者のための案内用フロアマップをデザインしました(手描きプロトタイプ)。
今年度は「デザイン思考による問題解決」をテーマとして、医大の4年生(2名)にデザイン思考の入門編として問題解決のプロセスを一通り経験してもらいました。循環器内科のドクターにご協力いただき、外来の観察による気づきをもとに「外来の待ち時間を気持ちよく過ごしてもらうには?」という問いを立てました。ブレインストーミングでアイデアを出してアイデアを具体化した簡単なプロトタイプを作成、病院のスタッフのみなさんにプロトタイプを見ていただきご意見をうかがいました。
エビデンスに基づいて合理的に解を求めていく医学の思考方法や医学部で身につけた効率的な学習態度とは異なる「デザイン思考の価値観やり方」は、一連のプロセスを経験した学生のみなさんに果たしてどのように伝わったでしょうか。

医療デザイン大学 (第1期)講義 「医療とデザインーUXの視点から」

一般社団法人 日本医療デザインセンター主催のオンライン講座にて、ひとつの講義を担当しました(2022年10月12日) 。受講生は全員が医療関係者でしたので、デザインの専門用語をなるべく使わずに、デザインと医療の関わりや、UX、PX(patient experience)、サービスデザインなどの考え方や事例についてお話しし、受講されたみなさんと議論しました。

デザイン教育のこれから

ビジネスの分野でデザインの重要性が認識されるようになり、デザイン思考やデザイン経営がかなり注目されるようになりました。医療/ヘルスケアの分野でもデザインの価値を理解してくださる方が増えていると感じます。
「デザイナーだけがデザインをする時代ではない」とか「デザインの民主化」などと言われるようになって久しいですが、いまのデザイン教育のプログラムをみると専門職としての職人型のデザイナー養成を目的としたものがまだ圧倒的に多いのが現状です。最近は、教養としてのデザインや専門職以外に向けたデザインの教育が各所でおこなわれるようになってきているので今後のさらなる拡大に期待しつつ。

追記:チーム編

実戦型デザインスクール Designship Do 第二期

個人ではなくチームでつくった教育プログラムです。
Designship Do 第二期を2022年2月〜5月に開講しました。全体監修そして運営スタッフとして、新しい教育プログラムの検討と運営に携わりました。各コースの監修のみなさん、各コースの担当講師のみなさん、そして運営メンバーといっしょに作り上げた教育プログラムです。受講生のみなさんからいただくフィードバックもプログラムの改善につながっています。
いいかんじの授業をひとつやるだけなら自分の経験を生かせばそれほど苦労しませんが、次の時代にひつようなデザインの知識やスキルを議論し、必要な授業と講師を揃えて3ヶ月にわたってオンラインで運営するのは、チームの力があってこそできたことです。大学の組織を離れても質の高いデザイン教育が提供できるという確信が持てたのは、Designship Doのおかげですね。

2023年には第三期の開講を予定しています


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